「北朝鮮への制裁問題と関連して、最近、国際社会が直面した最大の難題は金融取引ではなく、海上での瀬取りだ。国際海事機関(IMO)の規定を避けながら様々な品目の瀬取りをすることは「海賊」も同じだ。北朝鮮海洋当局が深く関与している」
国連の安全保障理事会における北朝鮮制裁委員会で専門家パネルの座長を務めたヒュー・グリフィス氏は最近、米国が差し押さえて没収した北朝鮮船籍の「ワイズ・オネスト」と関連して、北朝鮮の制裁違反を遮断する必要性を強調した。グリフィス氏は、「ワイズ・オネストが国連海洋法条約(UNCLOS)に違反する不法行為をしたことは明白だ」とし、「北朝鮮がこのような形で石炭を運送することを続けるなら、今後多くの北朝鮮の貨物船が押収されるだろう」と強調した。このような発言の根拠について、「昨年9月から5ヵ月間の制裁に関する年次報告書で綿密に調査・検討した結果」と話した。
グリフィス氏は、国連の北朝鮮制裁委員会で専門家パネルの座長として5年間、活動を率いてきた制裁専門家。4月に任期を終え、国連を離れたグリフィス氏は、先月末に韓国メディアでは初めて、東亜(トンア)日報のインタビューに応じた。
長文の電子メールに続き対面での2回のインタビューで、グリフィス氏は、「北朝鮮は制裁逃れを決心した国」とし、「このために(国家次元の)体系とグローバル組織が整っているという点で非常に特異な事例」と語った。アフリカとアジア、欧州、中東、南米に設置した45の公館を拠点に、事実上、全世界の制裁網を回避し、外貨稼ぎをしているということだ。グリフィス氏は、「各地域の公館に派遣された北朝鮮関係者が、(外交特権を規定した)ウィーン条約を乱用して外交官旅券で調査を逃れている」とし、「北朝鮮の情報機関要員、貿易取引業者、兵器密売業者、銀行家もこれに関与している」と説明した。
特にグリフィス氏は、「北朝鮮は、指導者が制裁逃れを絶対的な優先順位とし、(北朝鮮制裁委員会が設立された2006年から)13年も続けてきたという点で類例を見ない」とも強調した。
北朝鮮制裁委員会の専門家パネルが2月に出した年次報告書は、ワイズ・オネストをはじめ北朝鮮の貨物船の不法石炭輸送だけでなく、海上でなされる油類の瀬取りの様子を公開し、注目された。船舶と船舶をつなぐホースの形や甲板の上の人々の動きまで確認できる写真も公開された。これについてグリフィス氏は、「国連加盟国の協力を通じて得た調査情報を基に、すべての文章、すべての単語一つ一つまで検証した」と紹介した。
昨年、韓国の貨物船と企業が石炭の瀬取りに関与して調査を受けた事件と関連して、グリフィス氏は、「国籍に関係なく制裁を逃れて利益を得ようとする商人はどこにでもいる」とし、政府でなはなく私的な「企業」の制裁逃れのケースであることを強調した。北朝鮮の瀬取りには、韓国だけでなく少なくとも国連加盟国8国が関与していることにも言及した。さらに「北朝鮮の制裁逃れは国境を越えてなされている」とし、「国境なき(sans-frontier)制裁」と表現した。
北朝鮮が2月のハノイでの米朝首脳会談で解除を求めた制裁については、「2017年に採択された一連の制裁は、北朝鮮の外貨収入を断つための最も核心的なもの」と断言した。石炭、鉄鋼、鉱物質、海産物など輸出が遮断された品目は、北朝鮮の重要な収入源だが、人工衛星と海上追跡技術を利用した監視の目を避け、搬出、運送することは非常に難しいということだ。
グリフィス氏は最近、北朝鮮の相次ぐミサイル発射については、「弾道ミサイルの発射であり、制裁違反だ」としつつも、「(懲戒の)勧告の有無は、パネルが属する加盟国の決定にかかっている」と答えた。その一方で、「最近の発射は、過去の北朝鮮(挑発)の反応であり、制裁のさらに厳しい履行の必要性を示す」とも指摘した。
英国国籍のグリフィス氏は、国連を離れた後、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)に戻る予定だ。グリフィス氏は、「アフリカやイランの制裁業務にも携わったが、北朝鮮は制裁業務の中でも最も包括的で集中的な調査が求められるため、かなり困難だった」と話した。
ワシントン=イ・ジョンウン特派員 ニューヨーク=パク・ヨン特派員 lightee@donga.com · parky@donga.com