「真実は光と同様に目をくらます。虚偽は反対に美しい黄昏であって、すべてのものをたいしたものに見せる」(アルベール・カミュ=1913~1960)
デザイナーはいつも顧客を理解しようと努める。そのため、何より顧客の内面と隠された夢を理解することが重要だ。純粋な情熱を持って、目標を越えたデザインプロジェクトは成功する時がある。しかし、良い結果をもたらしたことがむしろ後日、傷となる時もあり、多くの挫折をして傷つく。そんな時、ふと脳裏をかすめる文がフランスの小説家、アルベール・カミュの文だ。『異邦人』という作品で、人生と世の中の不条理を語り、ノーベル文学賞を受賞したカミュ。彼の言葉には鋭利な理性と冷徹な感性がにじみ出る。人間は事物を分析し、物体の性質を理解しようと努めるが、人の心は分析が容易ではない。人は頭が良い「高等動物」なので、だますために保護色を使って甘くささやけば、「真実の光」が目をくらませる。反対に甘い虚偽は黄昏のようにいつも甘い外見で近づく。その甘さはまるでイブが蛇にそそのかされてリンゴを食べるように虚偽の黄昏に人を陥れる。
人間の尊厳と価値は自ら守らなければならないが、カミュの言葉のように時には「愚かさ」の罠にかかって弱い人間になってしまう。仕事で多くの人に会うが、人間の本性を悪用する人の罠にかかれば抜け出すことができず、挫折し、無力を自ら叱責したりする。そんな時、カミュのこの名言で、昔の人もそうだったし、これからもそうだと自らを慰める。自分自身を慰め、にもかかわらず世の中の明るい光で生き、努力したい。その切実さの船に帆をかけるように温かい慰めとなる文だ。