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デジタル音楽市場、おもしろい世の中ではないか

デジタル音楽市場、おもしろい世の中ではないか

Posted June. 14, 2019 08:41,   

Updated June. 14, 2019 08:41

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「18日間。18ポンド(約2万7千ウォン)払ってもらえば、俺たちが身代金を払うべきだったかどうか分かるだろう。この作品を公にするつもりはなかった。・・・携帯でのダウンロードはお勧めしない。おもしろい世の中だ」(ジョニー・グリーンウッド)

英国のバンド「レディオヘッド」は今月の初め、ハッキング被害を受けた。1990年代を代表する彼らの歴史的アルバム「OK Computer」(97年)時代の未公開の音源が盗まれ、脅迫された。15万ドル(約1億7700万ウォン)を払わなければネットに音源を公開すると。何と18時間分の音源だ。

#1 バンドは金を準備するのではなく反撃に出た。希代のバンドらしい前代未聞のやり方で。冒頭の言葉は、ギターリスト、グリーンウッドのフェイスブックの一部。バンドは、音源共有サービス「バンドキャンプ」にバンドのページ を開設し、ハッキングされた音源の全てを公開した。誰でも聴けるように。ただし、18日間の無料ストリーミング後は18ポンドを払ってダウンロードしなければならない。

#2 レディオヘッドがハッキング対応に選んだプラットホームであるバンドキャンプは、2008年に米カリフォルニア州で設立された新概念のデジタル音楽販売サービス。誰でも自分の音楽を望む価格で販売することができるオンライン市場だ。謙虚な人は無料で、自信のある人は1曲100万ウォンでも自分の音楽を消費者に売ることができる。「Melon」ですべての曲を同じ価格で販売する国内市場とは大いに異なる。

#3 情報技術の発展によって音楽市場は早く変化する。音楽消費の媒体も形態も急変した。レディオヘッドの「OK Computer」は発売当時、CD、LP、カセット、MDで販売された。このうちMDはCDに代わる強力な媒体として当時注目された。1992年にソニーが開発した。しかし、ソニーの予想は誤った。MDはMP3の前に挫折した。2011年、ソニーはMDの生産中止を宣言した。

#4 レディオヘッドはハッキングされた音源を公開し、アルバムの題名までつけた。「MiniDiscs [Hacked]」。アルバムの表紙は空MDの形だ。ボーカルのトム・ヨークがぎっしりと小さな文字で曲のタイトルを書いた音源のMDの感じを生かした。レディオヘッドは巨額の「身代金」を払う代わりに金を得ることになった。正しい復讐だ。6555人が有料でダウンロードすれば、渡すところであるお金15万ドルを反対に得ることになる。一日に365人だけダウンロードすればいい。収益金は環境保護団体に寄付される。復讐だが、すばらしくてクールな復讐だ。

#5 市場の変化は音楽を伝える方法も変えた。ヒット曲はもはやテレビからは生まれない。テレビに出たり巨大なファンクラブを持つ歌手でもないが、国内の音源サービスの最上位圏に突然現れるヒット曲が最近増えた。

「Aグループはフェイスブックのマーケティングに数百(万ウォン)使ったそうだ。B歌手は多分、千以上使っただろう」

あるレコード会社関係者の話。レコード会社は、広報のためにテレビ、ラジオ、新聞に投じた労働と資本を今はソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に投入する。「音楽は聴いてる?」、「最近流行りの歌」というタイトルのフェイスブックのページは、フォロワーが数百万にのぼる。一けたの視聴率の地上波テレビ、数十万人が購読する新聞を軽く越える影響力だ。このようなページに数百万ウォンを払って、「この歌一度だけ紹介してほしい」と言うのは、最近の歌謡界に蔓延したマーケティング技法だ。

#6 数十年間、音楽を追いかけてきた者として、新しいヒット曲の公式は目がくらむようだ。うまく適応できない。しかし明らかなことは、CDとMDの時代より今が18倍は幸せだということだ。MP3フォーマットの発明とデジタル音楽市場の形成は、音楽ファンにとって思いがけない祝福だ。プロメテウスの火だ。すべての音楽を同じ価格で、または、1ヵ月無制限定額制で聴くことができるとは・・・。

本来商品とは、品質とイメージによって価格が異なる。同じ大きさのかばんを3万ウォンで買うこともできるが、ブランドを買うなら3千万ウォンを払わなければならない。音楽市場は違う。粗悪な盗作曲も、歴史的な名曲も価格が同じだ。うまく選べば古典から新作まで多様な名品音楽を同じ価格で無限に聴くことができる。同じ歌手の同じような曲だけを一生聴くのは、数千万の曲がうごめく音楽市場を無視することであり、甚大な人生の浪費だ。今回は、レディオヘッドの18時間に18ポンドを払おうと思う。おもしろい世の中ではないか。


イム・ヒユン記者 imi@donga.com