米国防総省傘下の国防大学(NDU)が最近、報告書で韓日両国と核共有をしなければならないと主張し、北朝鮮の挑発再開と相まって波紋を呼んでいる。
国防大が提示した韓日との「核共有協定」は、現在、北大西洋条約機構(NATO)で適用されている。ドイツ、ベルギー、トルコ、オランダ、イタリア5ヵ国の同盟国の米軍基地に約150~200個のB-61戦術核弾頭が配備され、有事には当該国の戦闘機で投下される。
核弾頭の所有権は米国にあるため、5ヵ国は核不拡散条約(NPT)には違反しない。核弾頭を作動可能な状態に切り替える「最終承認コード」は米国が統制し、5ヵ国が搭載および投発手段(戦闘機)を提供して、「事実上50%」の使用権を行使する方式だ。核を実戦に使うには米国と当該国の大統領が承認しなければならない。
報告書は、韓国、日本との核共有協定が北朝鮮の核・ミサイルを抑止し、北朝鮮の挑発を事前に抑制するよう中国に圧力をかける効果があると見ている。その一方で、NATO式核共有を模倣してはならないと主張した。韓日両国に戦術核の「共同使用権」は与えるものの、核爆弾の投下は米国がするという意味のようだ。軍消息筋は、「休戦ラインを境界にして南北間の通常式戦力が対峙しており、核まで保有した北朝鮮の脅威を考え、非常時の戦術核の実戦使用を徹底して統制しなければならないという意味だ」話した。
これに対して一部では、米国が核共有協定の構想で、欧州とアジアの同盟国を差別するのではないかという声も出ている。チョン・ソンフン元統一研究院長は、「北朝鮮の核が完成され、目の前に配備されたため、有事には韓国軍が核を投下できるようNATO式核共有が必要だ」との考えを示した。
いかなる方式であれ、米国防総省傘下の機関が韓日との核共有協定を提案したことは、事実上、北朝鮮の核能力が臨界値を超えたことの証左という見方も多い。北朝鮮核問題の外交的解決の失敗を想定した「プランB」と見るべきということだ。
実際に多量の核弾頭と米本土まで到達する大陸間弾道ミサイル(ICBM)を備えた北朝鮮の核・ミサイル脅威を軍事的に一気に除去することは事実上、不可能というのが大半の意見だ。このため、「核を核で」抑止する現実的な代案が浮上するほかなく、拠点都市を焦土化して全面戦争に広がるICBMのような戦略核よりも、戦線を中心に敵を無力化させる戦術核に対する関心が再び高まっているのだ。これを通じて米国は、北朝鮮の核の脅威に対処し、中国とロシアの核戦争力増強を相殺し、域内の影響力遮断の効果を上げることができる。
特に、米国としては戦略爆撃機、原子力空母の展開など現在の核の傘システムの維持にかかる天文学的な費用を減らすこともできる。来年11月に再選に挑戦するトランプ米大統領としては、白人支持層を攻略する良い材料になる。韓国など域内の同盟国の核武装論を静め、「戦術核共同使用」にともなう核弾頭の運営管理の費用も当該国と分担できるという長所もある。
しかし、現実的制約もある。核共有は核を持ち込むとういうことなので、北朝鮮の核保有を正当化し、韓半島非核化宣言にも反する可能性がある。文在寅(ムン・ジェイン)大統領も2017年9月、CNNとのインタビューで、「韓国が自ら核兵器を開発したり戦術核を再び持ち込むべきだという考えに同意しない」と述べた。深刻な国論の分裂と同盟の亀裂を招く可能性もある。
中国やロシアなど周辺国の激しい反発も予想される。政府当局者は、「韓国に戦術核が再配備されれば、中国は高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)事態の時とは比較できない圧力に出るだろう。ロシアもこれに加勢する可能性がある」と強調した。
孫孝珠 hjson@donga.com