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放送と数字の力

Posted August. 03, 2019 09:25,   

Updated August. 03, 2019 09:25

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テレビとメディアの競争力は、視聴率から出てくる。毎日「成績表」を受け取りながら実戦を行えば、「上手な奴」だけが生き残り、実力本位の組織文化が作られる。一般の人たちは、世帯視聴率だけを知っていることが多い。放送局では、購買力のある人口が対象であるターゲット視聴率はもとより、到達率(視聴者流入率)と平均視聴時間の割合(視聴者が番組分量の何%を見たのかを示す)などの詳細項目を通じて、視聴者たちの動きや好みを詳しく見る。

最近、情報技術(IT)の発展が放送と結合したことで、視聴行動の測定において革命的な変化が起きている。最も簡単で象徴的な変化は、ユーチューブの「いいね」ボタンだ。このボタンとコメントは、作る人と見る人との直接的なつながり、すなわち対話チャンネルだ。かつてはなかなか会えなかった創作者と視聴者が、すぐに会って疎通することになったのだ。

より高次元でありながら「破壊的な」力を持つ変化は、ビッグデータの使用だ。デジタル技術は、チャンネルの移動、シーン・スキップのような視聴者の行動とその理由を盛り込んだ大規模なデータをリアルタイムで処理できるようにする。結果的にコストと時間の問題のために、全数調査ではなく、サンプリングを利用しなければならない既存の視聴率調査方法の限界を超えることができる。専門家らは、ビッグデータ技術の特徴を「4つのV」で圧縮して語る。大容量(Volume)と高速(Velocity)、データの多様性(Variety)、新しい価値(Value)がそれだ。

ビッグデータの活用は、すでにネットフリックスとアマゾン、ユーチューブなどのオンライン動画サービス(OTT)業者によって現実化されている。最もリードしていると評価されるネットフリックスは、世界で初めてビッグデータを利用したドラマ「ハウス・オブ・カード」を作った。視聴者がどのような俳優とジャンルを好むか、何を巻き戻して見るか、どのようなシーンで鑑賞を中断するかなどを分析した。さらに「13の理由(13Reasons Why)」、「デアデビル(Daredevil)」のようなドラマを同じ方式で出している。

ネットフリックスは、ホームページのデザイン、選択ボタンの形状など、放送に関連するすべてのものをAとBの2個セットにして、実績を比較して決定を下す「A/Bテスト」という方式も導入した。これにより、以前より番組の視聴率を20〜30%も上げたという。

この方法は、近いうちに放送局や番組制作会社など、既存の事業者によっても採用されるだろう。今は誰もがビデオオンデマンド(VOD)などのデジタルコンテンツを通じてデータを集めることができるからだ。データの革新は、最終的に番組レベルの平均向上という前向きな結果をもたらすだろう。

もちろん同意しない人もいるだろう。放送をはじめとする芸術は機械的な数字ではなく、人間の感性と天才性から出てくるという反論も可能だ。

しかし、このように考えてみればどうだろう。私は放送をはじめとする通信の本質は、自我(私)と他我(あなた)の区分だと思う。コミュニケーションとは、私の意思を君に伝えるプロセスだ。データ分析を通じて、私とあなたが違うことを知り、また、他人が欲しがるものを正確に知れば、より効果的なコミュニケーションと高品質のコンテンツ制作が可能ではないだろうか。

また、放送は基本的に大衆芸術だ。大衆の感性を理解し、一緒に呼吸しなければならない。この点で、放送に携わる者は、「機嫌伺い」を忘れてはならないという気がする。絶えず視聴者の胸の内を読んで、世間の変化を見逃してはならないからだ。ビッグデータも実は「ジタル化された機嫌伺い」ではないか。「機嫌伺い」がなければ、放送というジャンルはこのように発展できなかっただろう


シン・ムギョン記者 yes@donga.com