聴覚障害を克服したイ・ドクヒ(21=ソウル市庁)が、男子プロテニス(ATP)ツアー・シングルス本戦で初勝利を挙げた。聴覚障害を持つ選手がATPツアーのシングルス本戦で勝利したのは初めて。
世界ランキング212位のイ・ドクヒは20日、米国ノースカロライナ州で行われたウィンストンセーラム・オープンのシングルス1回戦で、世界ランキング120位のアンリ・ラークソネン(スイス)を9本のエースを決めながら2-0(7-6<7-4>、6-1)で破った。イ・ドクヒは、今大会までにATPツアーに5度挑戦し、いずれも予選敗退を喫した苦い経験を結果に結ぶ付けた。昨年、フィアンセのチョン・スビン氏と同行した同大会では、待機選手として参加し、欠員が生じたため本戦出場の機会を掴んだ。
イ・ドクヒは、「初勝利を挙げたことが信じられない。人々は僕の障害を笑いのネタにしてきた。彼らは、僕がテニスをやるのは無理だと言った。皆に、僕はできることを見せたかった」と話した。その上で、「障害を持つ人々に言ってあげたのは、『落ち込んでいなで』という言葉だ。あなたは、挑戦をし続ければ、何事でも達成できる」と語った。
ATPツアーは、イ・ドクヒの勝利をホームページの画面のトップニュースで掲載した。英国BBCも、イ・ドクヒの初勝利を重要ニュースとして取り上げた。
2ラウンドに進出したイ・ドクヒは、第3シードのフベルト・フルカチュ(41=ポーランド)と2回戦を行う。
先天的聴覚障害を持ちながら、子供の時からテニス神童と呼ばれて注目を集めたイ・ドクヒは、麻浦(マポ)高校を出て、ソウル市庁に入団した。19歳だった2017年には世界ランキング130位まで上がった。16歳1ヵ月で国際テニス連盟(ITF)ヒューチャーズ大会で優勝し、韓国人の最年少優勝記録を打ち立てた。イ・ドクヒの挑戦が広く知られるようになると、左利きの天才ラファエル・ナダル(スペイン)とノバク・ジョコビッチ(セルビア)がイ・ドクヒを練習パートナーに招待し、励ましたこともある。アンディ・マレー(英国)は、「聴覚障害はテニスでは大きなハンディキャップとなる。聞こえないとボールのスピードも読めないので不利だ」と言い、イ・ドクヒの闘魂を応援したこともある。
イ・ドクヒは手話を使うと健常者との交流に影響が出るのを嫌って習わなかったという。その代わり、相手の口の動きを見て会話する口話を使っている。しゃべる量が少ないと、アスリートにとって重要な肺活量が減るのを恐れて、わざと大きい声でしゃべる時が多い。
金培中 wanted@donga.com