はげ頭の男性がパッと笑っている。超現実的なピンク色の体は裸であり、頭には、紙でできた誕生日パーティーの帽子をかぶっている。行き過ぎと思われるほど大きく広げた口の中は真っ黒で、白い歯が特に目立っている。一体彼らは誰で、何のためにこのように大きく笑っているのだろうか?
中国の作家岳敏君の絵の中には、このように白い歯をむき出しにして大げさに笑う男たちが登場する。双子のようにそっくりなこれらの人たちは、皆はげ頭である作家自身に似ている。小学校時代に文化大革命を経験した彼は、高校卒業後、石油工場に配置され、つらい労働生活をし、一歩遅れて入った美術大学を卒業した年には天安門事態が起きた。政治・経済的に混沌と激変の時代を直接経験した彼は、自分が感じる絶望の感情と社会批判的な考えを絵で表現しようとした。深い悩みの末に選んだテーマは、自分自身を嘲笑する自画像だった。
人は誰でも常識が通じ、正義が実現され、表現の自由と個人の幸せが保障される社会を望んでいる。しかし、彼が目撃した当時、中国社会はこのすべてがまったく機能しない世界だった。完全絶望の状態で個人は何もできないときに出てくるものが、むなしい笑いによる自嘲だ。彼は社会や他人を嘲笑する代わりに、愚かで無気力な自分を嘲笑した。また、自画像は検閲と圧迫を避けるための巧妙な戦略でもあった。
絵の中の画家の複製された自我は、世の中に目を閉じて馬鹿みたいに笑っている。笑っているのに悲しそうだ。「何も考えず、誰かに操られながらも幸せそうな人たちを表現した。彼らはほかならぬ私の肖像であり、友人の姿であり、さらにはこの時代の悲しい自画像でもある」。画家はこう自画像を通じて中国の現実を皮肉りながら、冷笑を投げる。ところが、その背景には、愛と自由を象徴するガチョウを描きいれた。空を飛ぶガチョウらは、ひょっとすると、それにもかかわらず捨てられない希望とより良い未来への願いかもしれない。