トランプ米大統領は16日、トルコのシリア北東地域内のクルド人への攻撃について、「私たちとは何の関係もない戦い」と述べた。米軍の撤退により同盟であるクルド人に対する「兎食狗烹(利用できるときだけは重用されるが、利用できなくなるとすぐに捨てられるということのたとえ)」批判が大きくなる中、米国の責任を否定したのだ。
●クルド人から距離を置く
トランプ氏は同日、イタリアのマッタレッラ大統領との首脳会談前、ホワイトハウスでの記者会見で、「シリアとトルコは米国と何の関係もない土地で戦っている」と述べた。また、「クルド人が米国とともに戦ったことは事実だが、彼らのために多額の金を払った」とし、「クルド人は天使ではない」とも述べた。トランプ氏は、クルド人の独立国家建設を目指す武装組織、クルド労働者党(PKK)は、イスラム過激派「イスラム国」(IS)より過激で、テロの脅威が大きいとも主張した。米国が、トルコへの経済制裁案を発表し、トルコに対する批判の強めるかに見えたが、トランプ氏の今回の発言から、北大西洋条約機構(NATO)など安全保障および経済の面で同盟価値の高いトルコを意識し、クルド人と距離を置こうとしているとみえる。
トランプ氏は同日夕方、ホワイトハウスで、民主党のナンシー・ペロシ議長、チャック・シューマー上院院内代表、ステニー・ホイヤー下院院内代表、共和党のミッチ・マコーネル上院院内代表ら両党指導部と今回の事態を議論するために会合を開いた。しかし、トランプ氏がこの席でペロシ氏に「三流政治家」と暴言を浴びせ、民主党指導部が退席した。
これに先立ち、米下院は同日、トランプ氏の北部シリア内の米軍撤退の決定を非難する決議案を354対60の圧倒的賛成で可決した。決議案は、議会が米軍の北部シリア撤退の決定に反対し、トルコはシリアでの軍事行動を中止するよう求める内容が盛り込まれた。ペロシ氏は、トランプ氏との会合後、記者団に、「大統領が『メルトダウン』した」とし、下院決議案の採択と関連して「(大統領が)非常に動揺した」と強調した。
●緊張感漂うマンビジュ
シリア政府軍とトルコ軍が集結している戦略要衝地マンビジュでは緊張感が高まっている。トルコはクルド人の影響力が自国に及ぶことを防ぐために、シリアはトルコ軍のさらなる進撃を遮断するためにマンビジュをあきらめることはできない状況であり、戦争拡大の可能性がある。ロシアはマンビジュ付近に軍隊を派遣し、トルコ軍とシリア政府軍の間で巡回査察し、両国を「仲裁」している。ロシアの影響力拡大の憂慮にもかかわらず、トランプ氏は「シリアがロシアを引き込むとしても問題ない」と述べた。
人命被害も増えている。16日、トルコ国防省はツイッターを通じて、「ユーフラテス川東で『平和の泉』(トルコ軍の攻撃作戦名)作戦によって(クルド人)637人を無力化(射殺・生捕り・降伏など)した」と明らかにした。シリア人権観測所は、トルコ軍の作戦後に子ども21人を含む71人が死亡し、避難民は30万人を超えたと明らかにした。
国連安保理は同日、声明を通じて、「ISIL(イスラム国の旧名)を含め国連が指定したテロ組織が分散する危険と人道主義の状況悪化を大いに懸念する」と明らかにした。しかし、トルコの軍事作戦に対する批判はなく、形式的だと指摘されている。
カイロ=イ・セヒョン特派員 ワシントン=イ・ジョンウン特派員 turtle@donga.com · lightee@donga.com