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ブッカー賞最終候補のナイジェリアの作家「人間の心が壊れる理由を知りたかった」

ブッカー賞最終候補のナイジェリアの作家「人間の心が壊れる理由を知りたかった」

Posted December. 04, 2019 08:34,   

Updated December. 04, 2019 08:34

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「今回も、それが来ました。彼に与えられたすべてのものを盗み、彼が発見した喜びを破壊するためにです。これは何だろう?人間だろうか、獣か?魂だろうか、神だろうか?」(2巻117ページ)

ナイジェリアの養鶏場の息子として生まれたチノンソ。「土の匙」である自分と違って、美貌、知性財力を備えたウンダリとの結婚を夢見て留学の途に立つ。しかし、全財産をはたいて行った留学は詐欺であり、さらに悪いことに、殺人事件に巻き込まれて刑務所に入れられる。友人の裏切りに続いて、殺人の濡れ衣まで着せられた瞬間、彼は「それ」の影を感じて身を震わせる。

ナイジェリアのイボ族が信奉する「イボ宇宙論」の図式、発音するのも難しい神の名、すべての人間に宿る守護霊「チ」の概念…。第一印象は生硬なのに、愛のために駄目になった悲しい人生を扱ったプロットは見慣れている。いわば「とんでもない内容のドラマ」のようだ。最近、国内で出版された「マイノリティオーケストラ1、2」は、愛という話の原型にアフリカの文化を載せて、非凡な境地に引き上げた。

ナイジェリアの作家チゴジー・オビオマ(33・写真)は、デビュー作「漁師」に続き、この作品でブッカー賞の最終候補にノミネートされた。電子メールで会った彼は、「アフリカ・イボ族の思想であるイボ論を基にした物語であり、友人が体験した苦しみを素材にした小説だ。突然悲劇に巻き込まれる人生と、人間の心が壊れる理由が気になって書き下ろした」と話した。

「2009年、トルコに属する北キプロスに留学していた時、友人が屋根裏部屋から身を投げた。どんな感情が人間を極端に導くのか…。以後、人間の感情の変化を探求し始めました。そんな探求を通じて、人間の条件をよりよく理解できるようになったと思います」

チノンソの人生の旅は、「チ」の存在で神話的なオーラを重ね着せた。700年間転生を重ねた「チ」は、主人を複数変えながら彼らの生を抱く。「期待は時間の血筋に落ちたあくどい一滴の血です」。「そのような愛情は、魂が死んでいきながらその息で熱望するものであり、彼の心が閉じ込められている崇高な地下監獄です」…。箴言のような「チ」のナレーションは、絶望のデフォルト値で苦労してきた人間の運命を示す。16世紀と現在を行き来する所有者とのエピソードは、冒険談の活気を抱かせる。

「チはイボ論信仰の中心です。チによりイボ文明の地図を描く一方、黒人社会の無意識の劣等感を壊したかったのです。ディアスポラを含むアフリカ問題の核心は、私たちにも優れた思想と体制があることを理解できなかったことから出発すると思ったんです」

オビオマは、ナイジェリアのアクレで生まれた。10歳の頃から、ギリシャ悲劇、シェイクスピア、民族神話を耽読した。思春期の頃に会ったトニ・モリソンの「青い眼が欲しい」は衝撃的だった。黒い肌を醜いと思って、シャーリーテンプルのように「青い目」に憧れていた11歳の黒人の少女の物語だった。

本を読み終えた後、少年オビオマは、「私たちの美しさに自ら気付き、遺産に誇りを持ってこそ、別の世界が私たちを破壊することができない」ということを痛感した。キプロス、トルコを経て、米国内の主流作家として成長した今も、「何を書くか」が最も重要であることをよく知っている。

「米国での生活が今年で7年目となります。『ナイジェリア出身』と呼ばれながら、米国の社会的談論と政治、さらには米国について文を書くようにという圧迫を少しずつ感じています。しかし、私はそうしたくない。欧米化でアフリカが変わり、失われた私たちの文化を取り戻さなければならないと思います」

兄弟の多い彼は、「漁師」で兄弟間の競争と対立をのぞいてみた。次回作では、「漁師」で語りつくせなかった話を、もう少し押し通すつもりだ。好きな作家は、ウラジミール・ナボコフ、ジョン・ミルトン、シャーリーハザード、ヴァージニア・ウルフ、サルマン・ラシュディ。「高く飛び上がって新しい形を付与する文章を書く作家」たちだという。韓国ファンに残した一言はこうだ。

「一時、韓国人女性と恋に落ちました。一緒にソウルに引っ越したいと思いました。結局、別れましたが。韓国を訪れて、この目と両手で韓国を感じてみたいと思います」


李雪 snow@donga.com