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知っているふりをするな

Posted March. 21, 2020 08:06,   

Updated March. 21, 2020 08:06

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●「ジェリー・サンダスキーがシャワールームで裸だったことを監督に説明しましたか」(検事)

「はい、もちろんです」(マクナリー)

 

「少年と身体接触があったことを説明しましたね」(検事)

 

2017年3月、米ペンシルバニア州のある法廷で行われた児童への性的虐待の証言だ。マクナリーは、ペンシルバニア州立大学のアメリカンフットボールチームの若いコーチ、サンダスキーは同チームの古参コーチだった。

「サンダスキースキャンダル」は、約50件の児童・青少年の被害が明らかになり、米全域に衝撃を与えた。この事件がより関心を集めたのは、チームの監督が61年間、チームを率いて空前絶後の400勝の記録を残した「英雄」ジョー・パターノだったからだ。18年に米国で公開された俳優アル・パチーノ主演の映画『ジョー・パターノ 堕ちた名将』はこの事件を扱っている。

●15年7月、白人警察官ブライアン・エンシニアは、テキサス州ヒューストンの近隣で黒人女性サンドラ・プランドの車を止める。ブランドが車線変更で方向指示器をつけていなかったという理由だ。短い話の後、ブランドがタバコに火をつけると、車から降りるよう求めるエンシニアと応じないブラントの口論が次第に激しくなる。エンシニアはブラントを逮捕するが、留置場に入れられたブラントは3日後に自殺する。この事件は、18年にドキュメンタリー「Say Her Name: The Life and Death of Sandra Bland」で映画化された。

 

『Talking to Strangers』。訳すと、「見慣れない人と話すこと」だ。ジャーナリストとして社会科学の最新の研究結果に基づいて社会と人間関係の隠れた原理を分析してきたマルコム・グラッドウェルが6年ぶりに出した新作だ。彼は著作『天才!成功する人々の法則』で「一万時間の法則」、『逆転! 強敵や逆境に勝てる秘密』で逆境と欠点の力、『第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』では最初の2秒の直観の重要性をメッセージで投げかけ、国内にも多くのファンがいる作家だ。

彼が新作で注目したのは、人が人に会って、特に見知らぬ人に接する時に犯す過ちだ。サンダスキーが逮捕されたのは01年、彼の性的虐待がパターノに報告されてから10年が経った。

グラッドウェルは問う。数人が報告を受けたのに、若いコーチの声はなぜ無視されたのか、一部の人は証拠が明白なのになぜまだ『最も汚れた男』の無罪を主張するのか」。「次は方向指示器つけてください」、「はい、よい一日を」という言葉で終えることができたエンシニアの声かけが、なぜ悲劇で終わったのだろうか。

グラッドウェルは、他人が正直だと仮定する「真実基本値理論」、態度と内面が一致すると勘違いする「透明性観念盲信」、行動と結合する脈絡の重要性を見逃した「結合性無視」にその原因を見出した。

本に出てくる柱の概念は馴染みがないが、グラッドウェルは様々な事例、心理学理論と実験、さらにドラマ「フレンズ」の俳優の表情分析まで登場させ、読者を説得する。パターノと大学総長をはじめとする人々は、衝撃的な報告を受けながらも地域で長く愛されてきたサンダスキーに対する信頼を捨てることができない。その基底には、互いを信じなければ社会が維持できないという人間の社会的本性もある。警察官のエンシニアは、従順でない黒人女性の口調とタバコの火で態度と内面を一致させる過ちを犯したという指摘だ。

 

法廷は当時60代のサンダスキーに「余生に影響を及ぼし得る量刑を宣告する」とし、懲役30年から最大60年、事実上の終身刑を宣告した。パターノの銅像は引き下ろされ、報告ラインの頂点にいた総長も解任された。


金甲植 dunanworld@donga.com