「材料科学者なら誰でも、心の中に抱いている応用分野が1つはあります。私はそれが医学分野でした」
今月24日午前、京畿道水原市(キョンギド・スウォンシ)にある成均館(ソンギュングァン)大学研究室で会ったシン・ミギョン成均館大学グローバルバイオメディカル工学科教授(33・写真)は、世の中にない便利なものを作ることで喜びを感じる生まれつきのエンジニアに見えた。シン教授は、幼い頃から何かを作ることがとても嬉しかったという。
生け花からキルト、紙工芸まで手を使うことであれば、何でも好きだった。漢陽(ハンヤン)大学に通っていた大学生の頃は、毎週東大門(トンデムン)市場に行った。市場で購入した材料でアクセサリーを作った。手先が器用だと言われて、アクセサリーを販売するつもりで女子大学の前でうろついたこともある。それから10数年後、彼女は本当に世界になかったものを作る仕事を持つようになった。対象だけが目に見える工芸品から、目に見えないが、生命を生かす「材料」に変わっただけである。
シン教授は、医療用材料分野の若手学者だ。彼女は今年2月、第22回ロレアル・ユネスコ世界女性科学者賞で、若手科学者賞(インターナショナルライジングタレント)を受賞した。全世界が認める優れた研究成果を上げたり、公益性の高い活動を行った若手女性科学者15人に与えられる賞である。シン教授はこれに先立って、2018年はロレアルコリアとユネスコ韓国委員会が主催する国内賞である第17回韓国ロレアル・ユネスコ女性科学者賞・フェローシップを受賞した。
シン教授はKAISTで博士課程を勉強しながら、血の出ない注射針のコーティング技術を世界で初めて開発して注目を浴びた。誰でも注射を打たれたら血が出るが、なかなか止血できない血友病患者や糖尿病患者、子供には危険になりかねない。
シン教授は、注射を打つ時は針に残っているが、抜き出す時は離れて皮膚の傷を防ぐ物質を思い出した。生体接着剤であるムール貝のカテコールアミン成分を入れたキトサンで注射針をコーティングした。毎日実験を繰り返した末、2016年、高分子が適切にからみ合って針をコーティングする最適の時間を見つけて、世界初の血の出ない注射針を完成した。指導教授であるイ・ヘシンKAIST教授の主導で、商用化のための後続研究が行われている。
シン教授は、「世界を利する材料に関心が多い」と話した。医師が現場ですぐに活用できる実用性の高い材料を開発したいという。彼女は最近、植物を利用した様々な接着性生体材料を発掘することに力を入れている。果物の皮や種子など、植物の渋みを出す成分である「タンニン」もこのうちの一つだ。
タンニンは、最近になって研究が活発になされて注目される生体材料であるが、シン教授は2015年からこの分野に足を踏み入れた先駆者の一人に数えられる。シン教授は、タンニンとタンパク質を一緒に固めた後、心血管系疾患の治療薬を入れて体の中に注入する技術を開発している。シン教授は、「タンニンは原理がまだ明らかにされていないが、体に入ると、ターゲットである心臓をよく探していく特性がある」と語った。
シン教授は予定通りであれば、3月中旬頃、フランスのパリで開催される世界女性科学者賞の授賞式に出席しなければならなかった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で授賞式は来年に延期された。シン教授は、「そもそも賞に志願したことも、他の国の優れた科学者やエンジニアたちと交流できるという期待から始めたことなので、本当に残念だ」と話した。国内はもとより、世界的にも理工系では女性はまだ少数であるということで、このように一緒に会って交流する機会はめったにないという。
シン教授は、他の専攻の女子学生が訪ねてきて、「女性も工学部の教授になれることを初めて知り、希望ができた」と言ってくれたことを思い出した。それとともに「まだ、理工系分野は女性専門家があまりいない」とし、「後輩たちにやる気に与えるきっかけになればと思う」と話した。
ユン・シンヨン東亜サイエンス記者 ashilla@donga.com