ゴヤの黒い絵

衝撃的で不快感を覚えるシーンだ。ひどい外観の男が、子供を持ち上げて食べるシーンを描いたこの絵。１８世紀のスペイン美術の大家・フランシスコ・デ・ゴヤが晩年に描いた代表作だ。皇帝の寵愛を受けていた宮廷画家は、なぜこのような恐ろしい絵を描いたのだろうか？

ゴヤは、スペインの首席宮廷画家として富と名声を享受したが、芸術を通じて、彼が生きていた時代を辛辣に風刺したりした。王家の肖像を描くことが主な仕事だったが、「裸のマハ」のように権力を握ったスポンサーのひそやかな要求に合致する破格的なヌード画を描いたこともあった。４０代半ばに熱病で聴力を失って以来、死の危機を二度も乗り越えたゴヤは、晩年になると深い内面の世界に打ち込むことになる。１８１９年、彼はマドリード郊外の農家を買って作業室を構えたが、この家の前の所有者が聴覚障害者だったので、「耳が聞こえない人の家」と呼ばれた２階建ての家だった。ゴヤは世界と断絶したまま、この家で人生の最後の力作を完成させた。家の中の壁を黒く塗った後、４年間、壁画１４点を描いた。目もほとんど見えず、聴覚は完全に失った７０代の老衰した体だったが、助手の助けを借りずに一人で壁を満たした。スポンサーの要求どおりに描かなければならなかった作品とは違って、これらの壁画は、ゴヤの内面と作品世界を完全に示す最も率直な作品だった。

一様に暗くて奇妙な光景のこれらの絵は、後日「黒い絵」と呼ばれた。その中で、自分の席を子に奪われることを気にして、息子が生まれるとそのまま食べてしまうサートゥルヌスを描いたこの絵が、最も有名だ。ゴヤは、ローマ神話の中のサートゥルヌスを、両目を見開いて、ひたすら子供を食べるという一念に満ちた狂人の姿で描いた。当時、ゴヤは病魔と戦って、いつも死を考えており、腐敗した教会と王室の姿に幻滅を感じていた。たとえローマ神話をテーマにしているが、権力のために自分の子さえ飲み込んでしまう非情な父を通じて、画家は人生と権力への幻滅、人間の狂気と暴力性、そして悪の本能を告発しようとしたのかもしれない。