ワシントン赴任後に初めて訪れた米国防総省の庁舎のムードはものものしかった。入口を守る真っ黒な監視犬や、腕時計まで外して、全身スキャナーを通過するセキュリティ検査は、人を妙に緊張させた。5角形の建物の内部は複雑だった。軍服に軍靴を身に着け、きびきび動く軍関係者の間で、記者は何となく萎縮した。
そうしたペンタゴンの第一印象はすぐに変わった。韓国から来たという記者に当局者は好意を表し、韓米両国の懸案や北朝鮮のニュースに大きな関心を示した。廊下の壁に、韓国戦争当時の写真を見つけた。アジア担当報道官のデイビッド・イーストバーン中佐の机の上に置かれた韓国の螺鈿細工と「一緒に行こう」と刻まれた記念コイン、韓国のパンフレットもあった。イーストバーン氏は、韓国の有名チキン店やK-POP歌手の名前を知っていて、韓国のテレビ番組も見たと話した。イーストバーン氏が担うアジア36ヵ国の中でも韓国に関する知識は多そうだった。
懸案の質問やインタビュー要請への反応も、ペンタゴンは国務省をはじめとする他の部署に比べて速いほうだ。最近では、韓国や日本などインド太平洋地域国家の報道機関だけを対象に電話懇談会を行うなど、域内の懸案に集中したメッセージの伝達にも気を配っている。「同盟およびパートナーと緊密に協力する」という当局者の発言は、自動応答機のように繰り返されるほどだ。北朝鮮という脅威、軍事力増強に出た中国などが国防総省の懸案になり、これらの国を管理する必要性が高まったという理由もある。しかし、韓国が米国と戦争で共に戦った同盟国、相互防衛条約で結ばれた主要パートナーという認識が大きく作用しているとみえる。
トランプ政権で同盟の概念が変わるムードがあることが小さくない悩みであることは事実だ。在独米軍の削減の動きで、在韓米軍にも火の粉が飛ぶ可能性があり、在韓米軍の駐留経費負担に関する特別協定(SMA)交渉での増額圧力も強まっている。北朝鮮の激しい警告が連日続いているが、ホワイトハウスはハノイ米朝首脳会談の失敗の責任攻防に明け暮れている。ボルトン前大統領補佐官(国家安全保障担当)がトランプ氏と責任を擦り付け合う見苦しい姿を見ていると、韓国の運命がかかった非核化問題をこのように混乱したトランプ政権が主導することに対して不安が募る。
しかし、ワシントンの知韓派は、このような時であればあるほど韓米関係はさらに堅固にすべきであり、結局それしか方法がないと話す。米国の対外政策分野のコンサルティングをしてきたポール・ゴールドスタインPTB代表は、「最近起こっている北朝鮮の脅威が状況を再び変えている」とし、「韓国が安全保障のために中国人民軍と手を握るのではないか」と問い返した。韓国としては、先端戦略兵器の展開や韓米合同軍事演習の再開など北朝鮮への対応策も米国と共に議論するほかない。
3日後は韓国戦争70年だ。韓国は、米軍参戦勇士らと共に「血で結ばれた同盟」の意味を再確認する。これを機に、政権を越える長期的な観点で、同盟関係を強化する建設的な進化について議論しなければならない。両国関係の雷管であるSMA交渉の解決にも知恵を集める時だ。
ワシントン=イ・ジョンウン特派員 lightee@donga.com