「これらのソナタは、同情や遺憾などが全くなく、音楽だけが残る、永遠に続く生命の象徴ともいえます」(ソン・ミンス)
「このような音楽を演奏し、聞いていると、超越的な存在の前で私自身を省察する気持ちになってきます」(キム・ソンウク)
ベートーベンの最後の3つのピアノソナタであるソナタ30、31、32番が、ソウル瑞草洞(ソチョドン)の芸術の殿堂コンサートホールのステージを三日置きに飾る。ピアニスト・ソン・ミンス(韓国芸術総合学校教授)は、ベートーベン死去190周年を迎えて、2017年に開始したベートーベンのピアノソナタ全曲演奏の長い旅を、9月16日、8番目のフィナーレ舞台として終える。ピアニスト・キム・ソンウクはこれに先立って、9月13日、同じ場所で三つのソナタと対面する。3月6日に予定されたキム・ソンウクの公演が、新型コロナの拡散によって延期され、「三日目」の舞台が繰り広げられることになった。
ベートーベンのピアノソナタ30〜32番は、ベートーベン晩年の内面を余すところなく明らかにして、「ベートーベンの魂の真髄」に選ばれる作品だ。ベートーベンは、長さと構造が共に膨大な29番「ハマークラヴィーア」ソナタに自分のピアノのテクニックを注ぎ込んだ後、それ以降の三つのソナタでさらに内密で思索的な世界を繰り広げた。演奏時間が20分余りと短く、悲しみと超越の両方を込めたようなフィナーレ楽章を持つなど共通点が多いが、三曲がそれぞれ「他の魂」というほど独創的な世界を繰り広げる。
ソン・ミンスは、8回のベートーベンソナタの旅のうち、7回目を今年2月に開き、「コロナ大乱」の中でも支障なくゴール地点の前に差し掛かった。彼は、「ベートーベンが今、私たちのそばに生きていたなら、どんな話をするだろうか、交響曲第9番で強調した『人間の和合』のほかに、『自然の大切さ』を強調したのではないだろうか」と語った。「ベートーベンは森を歩きながら、『次の世代の人々がここを訪れたら、ベートーベンがここで作曲したと伝えてくれ』と語りました。人間が自然を毀損し、再びその被害に見舞われる今日、ベートーベンの精神が人類にかける言葉を振り返ることになります」
彼は9月初め、ベートーべンのピアノソナタ32曲全曲を収録したアルバムを、ソニークラシカルラベルとして発売する予定だ。アルバムを録音した統営(トンヨン)国際音楽ホールでは、9月11日に公演が予定されている。その他、光州(クァンジュ)、仁川(インチョン)、大邱(テグ)でも同じレパートリーで公演する。ソウル公演は3万3000〜5万5000ウォン、その他の地域は3万ウォン。
13日、ソウルで公演するキム・ソンウクは、ベートーベンの故郷であるドイツ・ボンの「ベートーベンハウス」メンター・プログラムの最初の恩恵者に選ばれ、この博物館のコレクションを独占使用する恩恵を享受したことがある。
「ベートーベンの直筆楽譜を広げながら、彼の魂を感じました。音楽史で人類精神と啓発精神を溶かし込んで、スペクトルを無限大に広げた作曲家がほかならぬベートーベンだと思います」
キム・ソンウクは、三つの「最後」のピアノソナタに先立って、中期のピアノ曲「アンダンテ・ファヴォリ」を1曲目に演奏する。「暖かく案内人の役割ができる曲」だから入れたと、彼は明らかにした。3万〜10万ウォン。
ユ・ユンジョン記者 gustav@donga.com