最近修繕された米ホワイトハウスの庭園ローズガーデンに設置された演壇。夜間照明で照らされたこの小さな舞台にトランプ大統領の夫人メラニア氏が上がると、待っていた120人の聴衆が歓呼と拍手で迎えた。2016年、トランプ氏が初めて大統領選に挑戦した時に共和党全国大会で演説して以来4年ぶりの全国大会の演壇に立った。
●移民・女性層の感性を刺激したメラニア氏の演説
メラニア氏の演説は25日(現地時間)、共和党全国大会2日目のハイライトだった。メラニア氏は、「3月から目に見えない新型コロナウイルスという敵により、私たちの生活は大きく変わったが、あなたは一人ではないと言いたい」と苦しみを受ける人々を慰めることで演説を始めた。また、「夫の政権は有効な治療薬やワクチンが全国民に行き渡るまで闘いをやめない。このひどいパンデミックの影響を受けたすべての人を守るためにあらゆる可能なことをするまで休むことはないだろう」と力説した。
メラニア氏は、「政治異端児」であるトランプ氏への批判を意識したのか、「夫は伝統的な政治家ではないが、言葉だけでなく、行動し結果を出す」と強調した。「政治ゲームをするのに時間を浪費しない。この国のための最善の人物」と支持を呼びかけた。
メラニア氏は4年前の全国大会の演説内容の一部が、当時のミシェル・オバマ大統領夫人の過去の演説から盗用した疑惑が持ち上がった。しかし、この日はその時の屈辱を晴らすかのように、約20分間、落ち着いた演説で感性を刺激し、盗作論議も起こらなかった。
スロベニア出身のメラニア氏は、26歳で米国に渡り、アメリカンドリームを成し遂げた過程を紹介し、「米国は自由と機会の地」と強調した。反移民政策で批判を受けているトランプ氏に代わって移民の共感を得ようとしたのだ。
メラニア氏は側近のケリーアン・コンウェイ大統領上級顧問、ステファニー・グリシャム大統領夫人広報責任者、マルシア・リー・ケリー上級顧問と演説を準備してきたと、米紙ワシントン・ポストは伝えた。メラニア氏はこれまで、公式の演説をしなかったにもかかわらず、各種好感度世論調査でトランプ氏より人気が高い。
トランプ氏は同日、ローズガーデンに突然姿を現わした、一番前の席に座って、微笑みながらメラニア氏の演説を見守った。これに先立ち、全国大会の映像では、移民に市民権を認めるセレモニーにも姿を見せ、「移民に開かれた指導者」のイメージを演出した。
●国務長官の「出張中演説」に批判
大統領夫人の演説は好評だったが、2日目の全国大会は再選キャンペーンのための大統領の権力乱用や公職の政治化などの論議が起こった。特に、イスラエルを訪問中のポンペオ国務長官が外交トップとしては前例のない全国大会演説に出たことをめぐって批判が起きている。
ポンペオ氏は演説で、「大統領は中国共産党の略奪的攻撃のカーテンを取りはらい、『中国ウイルス』拡散の責任を負わせた。中国との途方もなく不公平な貿易合意を終わらせた」と述べた。北朝鮮については、「(トランプ氏が)緊張を和らげ、北朝鮮指導者を交渉のテーブルに引き出した」とし、「核実験や長距離ミサイルの実験もなく、北朝鮮に拘束されていた米国人は、韓国で戦った英雄の遺骨と共に家族のもとに戻った」と述べた。このほかに、中東政策など外交安保の成果を挙げ、「大統領の決断力とリーダーシップのおかげ」と称えた。
米紙ニューヨーク・タイムズは、ポンペオ氏の演説について、「少なくとも75年間、外交・安全保障分野が政治的に利用されないよう維持されてきた線を破った」と指摘した。民主党のバイデン候補陣営は声明を出し、「税金が使われる外交公務中に大統領の再選のためにお使いをしている」と非難した。
このような非難にもかかわらずポンペオ氏が演説を強行したのは、トランプ氏の核心支持勢力とされる米国内の福音主義者や保守ユダヤ人の票を集めるためという見方が多い。録画なされた場所は、エルサレムの全景が見下ろせるホテルのルーフトップ。ホテルの名前は古代イスラエルの王、デビッドの名前を取った「キング・デビッド・ホテル」だった。
ワシントン=イ・ジョンウン特派員 イ・セヒョン記者 lightee@donga.com