今年3月31日、日本で従業員が70歳まで働けるよう規定した「高齢者雇用安定法」改正案が国会を通過した。来年4月から企業に雇用された社員は70歳まで定年を保証されることになる。
日本の企業は、シルバー人材を活用するための準備を急いでいる。実際、日本企業の平均年齢はこれまで上がってきた。東京商工リサーチの調査基準によると、上場企業1841社(3月決算基準)の従業員の平均年齢は2010年の39.5歳から19年には41.4歳に上がった。24年には日本で50歳以上の人口が史上初めて半数を超えるとみられる。高齢者を活用するほかない日本企業としては、これに向けて新しい経営システムを先行的に構築できない場合、競争力を維持することが難しくなるだろう。
最近、韓国企業も社員の高齢化を解決するための方法に関心を寄せている。高齢化を早く体験している日本企業で一部解答を見いだせるだろう。
日本企業は、号俸制や定期昇級制度をなくし、必要なスキルを持つ労働者を素早く常時採用し、業務内容や実績によって報酬を決めるシステムを模索している。日本では、このような改革を「メンバーシップ雇用」から「ジョブ型雇用」への革新と呼ぶ。従来のメンバーシップ雇用方式は、業務の内容が総合的でローテーション勤務も多く、専門性に関する規定も曖昧だった。また、評価が難しく、勤務時間、年功で賃金を払う慣行が強い。
一方、ジョブ型雇用は、欧米のように業務の範囲を限定的、専門的に決め、職務によって賃金を支払う。他の企業への再就職が容易で、雇用の柔軟性が高いという長所がある。同じ業務をするなら、実質賃金の水準は凍結されるので、日本企業としては長年の経験と技術を蓄積した高齢者を継続して雇用しても負担を減らすことができる。
新型コロナウイルスの影響で、「ジョブ型」雇用制度への改革を推進する日本企業が増えている。大手化粧品メーカーの資生堂は、今年1月から管理職を対象に職務定義書(ジョブディスクリプション)で社員の職員を明示し、達成度合いなどをみるジョブ型雇用を導入した。また、8000人の平社員に対しても、2021年1月からこの制度を導入することを決めた。ただし、ジョブ型雇用制度が広がるには、特定分野に専門化された人材が必要に応じていくつかの企業を渡り歩けるなど、雇用市場および勤務条件が柔軟で成熟する必要がある。
大手飲料メーカーのサントリーは2013年、65歳定年制を導入したのに続き、今年4月に65歳以上の労働者の延長労働制度を導入するなど、高齢者活用制度の定着に成功したと評価されている。同社は、早くから労働者の育成、評価、職務資格制度を体系的に導入し、人材育成にも力を入れてきた。高齢者を含む人材を「雇用しなければならない負担」と認識するのではなく、価値を創り出す人材に育成し、高齢者も実力に合った職務と報酬を受けるようにするということだ。
サントリーの人事制度の基盤になるのは「職能資格制度」と「資格・役割制度」。職能資格制度は、職務遂行能力によって職能資格を社員に適用することであり、ビジネス専門家を指向して経験を蓄積することだ。一般社員の専門性を育てて、年功序列や年齢ではなく自身の実力で評価され、雇用を維持できる文化を定着させる基盤になる。
このため、年間4回、上司と部下がミーティングを行い、成果とともに年初の目標をめぐって不備な点や不十分な部分の能力開発ポイントなどを話し合う。幹部には難度が高い挑戦課題を自ら設定できるよう誘導する。
実際、一部の日本企業は、高齢者の延長雇用制度を導入し、一括的に賃金水準を削減して、労働者の動機づけを弱めたりもする。このため、事務所だけを守るシルバー労働者に転落するケースも多い。サントリーの努力は、一般的な高齢勤務者制度のこのような弊害を克服し、先制的に対応するという点でいくつかの示唆点を提供する。