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コロナウイルスに遺伝子操作の痕跡? 科学界「説得力のない陰謀論」

コロナウイルスに遺伝子操作の痕跡? 科学界「説得力のない陰謀論」

Posted September. 18, 2020 08:34,   

Updated September. 18, 2020 08:34

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香港出身の生命科学者・閻麗夢前香港大学研究員が、新型コロナウイルス感染症は中国湖北省武漢の軍事研究所で人工的に作られたという主張を盛り込んだ論文を、14日(現地時間)発表した。科学者たちのデータ共有サイトに公開されたこの論文は、一日で全世界で40万人が読んで熱い注目を集めた。しかし、科学者たちは証拠が弱く、説得力が足りない典型的な陰謀説だと批判している。フェイスブックやツイッターも、「新型コロナの武漢製造説」を虚偽情報とみて、閻研究員のツイッター・アカウントを遮断するなどの措置に乗り出した。

●6ヶ月間ならウイルスを完全に変える

閻研究員は26ページの論文で、新型コロナを誘発するサーズコロナウイルスー2(SAR―CoV-2)は自然に進化しなかったという根拠を3つ挙げた。

まず、中国浙江省舟山地域で発見された二つのコウモリのコロナウイルス(ZC45、ZXC21)のゲノム塩基配列が、サーズコロナウイルス-2と非常に似ているということを提示した。また、ウイルスが人体細胞に浸透する時、重要な役割をする突起タンパク質(スパイクタンパク質)遺伝子の中間に、特定塩基配列を挿入したような跡が見つかったという主張も出した。この塩基配列は、重症急性呼吸器症候群(SARS)を引き起こすサーズコロナウイルスと似ており、人為的挿入の証拠だとも主張した。

スパイク蛋白質が細胞に浸透するためには、加水分解酵素によって切断される過程が必要だが、この切断部位が感染により有利に変わったことも取り上げた。閻研究員は、「現在の技術で研究室で6ヶ月間なら、十分にウイルスを変えることができる」と主張した。

●「カットして繋げた痕跡」は自然にもできる

閻研究員の主張に対する科学者たちの反応は冷たい。特に「操作の決定的な証拠」として提示した「塩基配列を切って繋げた跡」を巡る批判が多い。世界で最も精密なサーズコロナウイルスー2の遺伝子地図を完成して、4月に発表した基礎科学研究院(IBS)RNA研究団のチャン・へシク研究委員(ソウル大学生命科学部教授)は、「塩基配列を挟み込むために使われる酵素(制限酵素)が切ることができる特定の塩基配列が見えるというのが根拠だが、このような配列は他のところでも偶然発見されることがある」とし、「意味ある証拠とは言いづらい」と語った。

ウイルスの遺伝子操作という難しい研究について言及しながら、昔の技術である制限酵素を使ったことも不思議といえる。制限酵素は、特定塩基配列だけを認知して切ることができるので、制約が多い。チャン研究委員は、「閻研究員すら、同じ論文で、より一歩進んだ塩基合成技術(ギブソンアセンブリ)を言及しているが、あえて制限酵素を証拠として出すなんて理解できない」と語った。

「原本」として提示した2つのコウモリウイルスより、サーズコロナウイルス-2に近い塩基配列を持ったコロナウイルスが、コウモリとセンザンコウなどから見つかったが、これを無視している点も批判対象となっている。閻研究員は論文で、「サーズコロナウイルス-2とより近いコウモリは操作された」とし、「すぐに追加証拠を提示したい」と語った。しかし、チャン研究委員は、「このように主張した根拠は実験論文一遍に過ぎず、まだ説得力が弱い」と語った。

●「感染しやすいウイルス」の意図的設計は難しい

ウイルスに感染しやすいように意図的に設計するのは難しい点も、操作説に反論する証拠となっている。世界で初めてサーズコロナウイルスー2の突起タンパク質の構造を精密に明らかにしたソウル大学化学部のソク・チャオク教授は、「構造をよく知っていれば合成もできるが、現在の技術力はそれほど精密ではない」と語った。構造生物学者のナムグン・ソク・SLMS代表も、「スパイク蛋白質と細胞タンパク質がよく結合するように、事前に予測して構造を作ることは不可能に近い」と語った。

ウイルス全体のゲノムに変異が広がっている事実も、「人工製作説」を否定する根拠として指摘された。ナムグン代表は、「人為的操作だったら『原本』を置いて機能変化を望む領域のみ操作すればいいが、そのほかにも何の効果もない突然変異がゲノム全体から非常に多く発見された」とし、「自然に形成された変異だと見るのがより説得力がある」と説明した。

ゲノム専門家であるテラジェンバイオのキム・テヒョン常務取締役は、「1月にウイルスのゲノムが公開された後、多くの科学者がウイルスから操作の痕跡を見つけるために試みたが、自然発生的に発生した論文だけが10数本出てきた」とし、「閻研究員がこれを覆すためには、今のような不正確な主張ではなく、きちんとしたデータや論文を提示しなければならないだろう」と話した。


ユン・シンヨン東亜サイエンス記者 ashilla@donga.com