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死者ゼロの奇跡

Posted October. 10, 2020 08:51,   

Updated October. 10, 2020 08:51

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155人を乗せてニューヨークを離陸した飛行機が、鳥の群れと衝突してエンジンを失って墜落する。機長は成功確率が0に近い非常着水を選んで、ハドソン川に降り立った。死者は0人。2009年1月に発生したこの事件は、「ハドソン川の奇跡」と呼ばれるが、42年間2万時間を飛行した機長の老練さ、氷水に陥った乗客を24分で全員救助した落ち着いた救助隊があったから可能だった。

◆ニュージーランドの第2の都市・クライストチャーチには、2010年9月にマグニチュード7.1の地震が発生したが、わずか2人の負傷者のみ出た。同年1月、ハイチでマグニチュード7.0の地震で22万人が命を落としたこととは対照的といえる。ニュージーランドの首相は「奇跡だ」と語ったが、被害を防いだのは厳格な建築基準だった。ニュージーランドは1931年、マグニチュード7.8の地震で256人の死者が出ると、強力な耐震設計を法制化した。

◆火災惨事を防ぐ基本的要素は、火災警報、スプリンクラーやファイアウォール、そして消防士の迅速な対応だ。ハングルの日の連休前日の夜、蔚山南区(ウルサン・ナムグ)の住商複合マンションでの大型火災も、この基本に忠実したので死者が一人も出なかった。建物の中間層で始まった炎は、強風に乗ってあっという間に33階建ての建物の前面を巻き付けた。しかし、火災警報器が適時に鳴って住民たちは早く避難することができたし、スプリンクラーが作動し、「燃えるにおいがする」という通報を受けて、火災初期に出動した消防士たちが火の燃え広がりに対処できた。

◆英ロンドンの24階建てのグレンフェルタワーとアラブ首長国連邦(UAE)ドバイの86階建てのトーチタワーに、2017年6月と8月に相次いで大型火災が発生した。発火地点は建物の中間層で、皆眠っていた夜明けの時間帯ということもあった。しかし、トーチタワーには火災警報が鳴り、警備員たちが家々のドアを叩いた。ファイアウォール構造になっており、炎は簡単に燃え広がらなかった。2時間半後に火災は消し止められ、死者はいなかった。一方、公共賃貸マンションのグレンフェルタワーには、警報も、ドアをノックする警備員も、ファイアウォールもなかった。約80人が死亡した。

◆建物外装材も重要だ。グレンフェルタワーの惨事の時は、可燃性外装材が焚き付け役をした。蔚山マンションの外装材は、高層住商複合ビルによく使われるアルミニウム複合パネルであるが、パネルの間に騒音、揺れなどの緩衝材として入った樹脂が火によく燃える性質があり、外壁を伝って炎が早く燃え広がったと推定される。全国に30階以上の高層ビルは、4792カ所ある。高架はしご車も23階の高さまで消火が可能であり、都心では進入スペースを確保することも難しい。不燃性建築資材を使って、火災警報システムとスプリンクラー、ファイアウォールなどの建物内の火災に備えたシステムの強化に、少しのぬかりもあってはならない。年間で最も多くの火災死亡者が発生する冬が迫っている。