「本当に苦労して開いたのに…。観客が少しでも来なければと思いますが」
27日午後4時(現地時間)、フランス・パリ最大の繁華街・シャンゼリゼ通り。凱旋門が前に見えるピュブリシス劇場。「パリ韓国映画祭」の開幕が1時間後に迫ってくると、映画祭の関係者たちは心配をほのめかした。俳優招待、開幕式などの付属行事もすべて省略されたうえ、雨まで降る状況だった。
今年で15年目のこの映画祭は、フランス、さらに欧州に韓国映画を知らせる重要な役割を果たしてきた。2006年の第1回は観覧客が529人に過ぎなかったが、着実に増加して1万人を超えた。特に昨年は、映画「パラサイト」のカンヌ映画祭・パルムドール受賞と俳優・宋康昊(ソン・ガンホ)の開幕式出席などで観覧客が2万人に迫った。フランス人が直接参加して上映作品を選び、両国の文化交流にも大きな役割を果たした。
しかし、今年は見通しが暗かった。3月から広がった新型コロナウイルス感染症のためだ。公演会場などの多人数利用施設が閉鎖され、映画祭の開幕が不透明となった。先月に2次拡大が本格化し、最近フランスでの1日の新規感染者数が最大で5万人を越えると、「今年は諦めなければならないか」という悲観論が広がった。
そのたびに、映画祭側を慰めてくれたのはフランス人だった。映画祭のボランティアに出たパリ市民たちは、「マスク着用、社会的距離置きを守りながら、ぜひ映画祭を開こう」と勇気を出した。映画祭側が開設したソーシャルメディアには、「必ず映画祭を開いてほしい」という応援の書き込みが数百件も書き込まれた。
開幕当日、懸念は歓声に変わった。一人、二人ずつ劇場の前に列ができはじめ、開幕40分前には100メートル以上の長い列ができた。パリ市民・ティエリ氏(29)は、「休暇を夏に使わず、韓国映画祭が開催される期間に使った」と話した。2回目から毎年観覧してきたというセリアさんは、「コロナのため、皆困難な時期なので、韓国映画の力になりたくて来た」と話した。
同日の開幕作の観客は200人。新型コロナの予防のため、全座席(400席)の半分のみを使ったため、実際は満席だったといえる。観客はマスク着用、検温を素直に従った。上映映画を選定してきたプログラマのダビド・トレドラー氏は、「観客を見ると涙が出る」とし、「今年だけは重くて壮大な開幕作ではなく、誰もがコロナを忘れて笑うことができる作品を選んだ」と説明した。開幕作は、コメディ映画「オーケーマダム」だった。
映画を見ながら、観客は「新型コロナのストレス」を一瞬忘れてしまった雰囲気だった。ピエールさん(32)は、「不可能に近かった韓国映画祭が開幕したように、克服するのが非常に難しく見えるコロナ事態もうまく乗り越えてほしい」と話した。
金潤鍾 zozo@donga.com