Go to contents

爛熟した音の曲線、「悲しみを祝いましょう」

爛熟した音の曲線、「悲しみを祝いましょう」

Posted November. 05, 2020 08:55,   

Updated November. 05, 2020 09:17

한국어

先月31日の夕方、英シンガーソングライター・サム・スミス(28・写真)のオンラインコンサートを見た。ロンドンの歴史的な録音スタジオ「アビーロードスタジオ」に構えたシンプルな舞台が生き生きしている。

彼の声帯が黄色のじゅうたんでできている想像をしばらくしてみた。和風の柳刃包丁でニューヨークチーズケーキを切るように。ポツン、ポツン。丸い音符一つ一つが、松葉餅のようにきれいに作られて、唇から滲み出る姿。聴覚的な壮観だった。

「皆さん、お元気ですか?私たちの人生で経験する最も奇妙な時代に、このような方法ででも私の新しい音楽をお届けしたいと思いました。可能な限り楽しんでいただければと思います。一杯のお茶、一杯のワインを持ってね」

画面の向こうのアビーロードのスミスは、「楽しく」を強調したが、気持ち良い緊張感が毛細血管を収縮させた。彼は1時間余りの間、新曲と代表曲を歌い、新作製作の話も聞かせた。

「私がよどみなく若ければ/失うことが怖くなければ…」(「Young」より)

3年ぶりのレギュラアルバムである3回目のアルバム「Loves Goes」(先月30日発売)の最初の曲、最初の小節から、まだ十分若いこの歌手の矛盾的な歌詞に説得された。スミスが描く爛熟した音の曲線のためだ。英国の歌手・イモージェン・ヒープの「Hide and Seek」のように、複数のスミスの声の分身が和音で主旋律を包み込むような独特のアカペラ曲。

スミスは、2014年にデビューしてアデル(32)と一緒に、英国のソウル・ポップバラードで世界の人々の心に響いた。「I'm Not the Only One」「Stay with Me」は、すでに21世紀バラードのクラシック。彼の自宅には4つのグラミー賞、3つのブリットアワード、1つのアカデミーとゴールデングローブ(「007スペクター」の主題歌)トロフィーがある。2年前の来韓公演(ソウル九老区高尺スカイドーム)で聞かせてくれた完全無欠なライブの実力と絹のような音色は、まだ蜃気楼のように脳裏に残っている。

「今回のアルバムは、ロンドン、スウェーデン、ロサンゼルス、ニューヨークを回って、これまで以上にいろいろなミュージシャンと一緒に制作しました。1回目のアルバムはデビューだったので大変だったし、2回目のアルバムは周りからの圧力が激しかったが、3回目のアルバムは、可能な限り、自ら楽しみながら自分の内面をそのまま表現しようとしました」

カルヴィン・ハリスと一緒に作ったダンス曲「Promises」の前奏が流れると、スミスはなまめかしいダンスを踊りながら、「アビーロードを『ゲイバー』にしたい」となだめた。

スミスが新作で最も大切にする曲は、ミディアムテンポの「So Serious」だという。

「『頭上に手を伸ばして見て。私のように、時には悲しくなるときは』という歌詞は、多分3回目のアルバム全体を貫くメッセージなのかもしれません。『さあ、みんなで悲しみましょう。悲しみを誇りに思ってお祝いしましょう!』と話しかけるんです」

スミスは、「ロサンゼルスで他のミュージシャンとこの曲の作業を終えた後、バルコニーで流しながらシャンパンとダンスを一緒に楽しんだことが最も記憶に残る」と話した。

ピアノバラード「For the Lover that I Lost」は、昨年セリーヌ・ディオンが先に発表した曲。スミスは、地声と裏声の音楽的境界を無力化させる特有のジェットコースター絶唱で、ディオンの歌を盗んで「サム・スミスバラード」にしてしまった。

「時には自分が50代のように感じられます。数年間休暇を持つことができませんでした。アルバム作業を終えたので、これからはスコットランドの田舎町に行って、気ままに着て、あてもなくあちこちを歩いてみようかと思います。ワールドツアーで皆さんと再会できる時までは…」


イム・ヒユン記者 imi@donga.com