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完全なラブストーリー

Posted November. 09, 2020 08:28,   

Updated November. 09, 2020 08:28

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「35年間僕は古紙に埋もれて働いている―これはそんな僕のラブ・ストーリーだ」(ボフミル・フラバル『あまりにも騒がしい孤独』)

14年間、私は文学編集者として働いている。作家の原稿を受け取り、文を整え、タイトルと表紙をつけて一冊の本に仕上げる仕事をする。私の人生と本は切っても切れない関係になって久しい。この文を書いている日も、私が作った新しい本が出版された。無数の可能性を持って、私の手にあるこの本が長く愛されることを願う。

 

ここに、私との対極に立って、手に握った本を見下ろす一人の男がいる。彼の名前はハニチャ、古紙処理係だ。私の仕事が本を始めることなら、彼の仕事は本を終わらせることだ。彼はネズミの群れがうごめく地下室で、素手でプレス機を扱う。天井に開いた穴からひっきりなしに古紙が落ちてくる。ゲーテやニーチェの作品や、もはや手に入らない貴重な本、使い尽くされた、または一度も読まれていない本が、彼の手で速かにプレスされる。その労働の過程で、ハニチャは知識を積み、知恵を得る。地下に孤立したまま地上の世界を読む賢者になったのだ。

 

ハニチャの場所を巨大で便利な機械が取って代わるのは近代の終末、人間疎外といった言葉で簡単に表現できるだろう。しかし、彼がプレス機に入って自身の世界を終わらせることで完成する結末は、崇高という言葉でも不十分に思える。ただ小説が描き出せる最も完璧な結末を見たければ、この作品を読んでみろと言うしかない。この小説は、国内の小説家50人が「今年の小説」(2016年)1位に選んだ作品であり、著者のボフミル・フラバルは『チェコ小説の悲しき王』と呼ばれる。自身の作品を禁書とした故国を離れなかったためだ。自分が最後まで守ろうとした世界に身を投じたハニチャのように。