1998年7月。パク・セリ(43)は米女子ツアー(LPGA)のメジャー大会である全米女子オープンで靴下を脱いで池の中に入った。黒く日焼けした脚と対比される真っ白の素足は、それまでの過酷なトレーニングを物語っていた。「素足闘魂」を発揮し、頂上に立ったパク・セリは、通貨危機に見舞われた国民に希望を与えた。
新型コロナウィルスの感染拡大で全国民が苦しんでいる2020年12月。今度は、同大会に初出場のキム・アリム(25)が白色のマスクとともに注目を浴びながら劇的な逆転優勝を果たした。キム・アリムは、「コロナで大変な時期だが、私のプレーが誰かには希望とエネルギーになって欲しい」と話した。
キム・アリムは15日、ヒューストンのチャンピオンズGC(パー71)で行われた最終日ラウンドで通算3アンダー281を記録し、世界1位の高眞榮(コ・ジンヨン)とエイミー・オルソン(米国)を1打差で振り抜いた。優勝賞金は100万ドル(約10億9300万ウォン)。首位に5打差の9位タイでスタートしたキム・アリムは、6バーディー、2ボギーでスコアを4つ伸ばす勝負強さを発揮した。
元気に満ちたアッパーカットのジェスチャーと闊達な「直角礼」で知られる「明朗ゴルファー」キム・アリムは、今季の韓国女子プロゴルフ(KLPGA)ツアーでドライバー飛距離1位となった飛ばし屋だ。今大会で平均255.8ヤード(4位)の飛距離と正確なアイアンショット(パーオン率は69%、5位タイ)を生かして、全米女子オープンに初出場で優勝を飾る歴代5人目の「シンデレラ」になった。
韓国勢は同大会だけで10人が計11勝を挙げる気炎を吐いた。朴城炫(パク・ソンヒョン)は2017年にトランプ米大統領が見守る中で優勝したが、当時トランプ氏は「韓国のゴルファーたちは世界最高だ」と絶賛した。
キム・アリムは2018年にKLPGAツアーデビュー3年目で初優勝を果たした。他でもないパク・セリ氏が主催したパクセリ・インビテーショナルだった。この時、パク・セリから優勝トロフィーを贈られた。そのキム・アリムが、この日は優勝を決めた後、全米女子オープンの優勝トロフィーに刻まれたパク・セリ、朴仁妃(パク・インビ=優勝2回)ら歴代優勝者の名前の横に刻まれた自分の名前を確かめては、「光栄だし、不思議な気持ち」と語った。テレビ中継で解説を務めたパク・セリ氏は、「本当にありがたい。誇りに思う」と喜んだ。
キム・アリムが初日から4日目まで、終始マスクを着用してプレーしたことも話題を呼んだ。LPGAツアーでは珍しい姿だが、海外メディアは、新型コロナウィルスが生んだ新しい現象として注目を集めた。英紙ガーディアンは、「マスクを着用したキム・アリムが童話のような優勝を果たした」と報じた。キム・アリムは「誰かに迷惑をかけることになりかねない状況なので、不便だけど甘受した」と話した。
今年の大会は、コロナの影響で地域予選が開かれず、出場資格は世界ランキング上位50位から75位まで拡大した。キム・アリムの出場は、このおかげで可能だった。基準日となった今年3月16日のキム・アリムのランキングは70位だった。開幕直前は94位だったキム・アリムは、歴代最低ランキングでの優勝となり、今回の優勝でランキングは30位まで上がった。
鄭允喆 trigger@donga.com