来年1月にバイデン政権が発足すれば、韓米同盟が本来の位置に戻るという見方が多い。「米国第一」を掲げて「同盟請求書」を乱発したトランプ政権と同盟を重視するバイデン政権は明確に異なると期待されている。
政府内外でも、ともすれば駐留経費負担問題で在韓米軍の縮小をちらつかせたトランプ氏の「同盟締めつけ」から脱したことを安堵するムードがうかがえる。今月初め、米議会が在韓米軍の駐留規模を現行(2万8500人)で維持する内容の国防権限法案(NDAA)を処理したのも、バイデン氏の同盟重視の意向が反映されたものとの評価がある。
バイデン政権で在韓米軍の問題は「同盟問題」に飛び火しないよう管理され、伝統的血盟関係が修復されると楽観するムードも感知される。
しかし、現実はそれとは正反対に流れるかも知れない。中国と北朝鮮の脅威と域内安保の挑戦が強くなればなるほど、米国は政権と政派を越えて自国に最も有利な方向で海外駐留米軍を運用する可能性が高いためだ。この場合、在韓米軍の問題は、韓米同盟の「最大の難題」になる可能性がある。すでにその兆候は捉えられている。先日、米議会が海外に米軍兵力や軍事装備を配備する際、駐留国が華為技術(ファーウェイ)など中国企業の第5世代(5G)移動通信技術を使っているかどうかを考慮すると宣言したことを「信号弾」と見ることができる。ドイツと日本の次に多くの米地上軍と高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)のような戦略兵器が配備された韓国に及ぼす影響は小さくない。
中国の軍事力拡大の加速化も、在韓米軍の地位と役割に主要変数として作用することが予想される。南シナ海の軍事化など中国の覇権を阻止することは、バイデン政権でも超党派の核心安保課題として推進されるだろう。その過程で、米国は対中牽制に韓国の参加を要請し、在韓米軍の「戦略的柔軟性」を積極的に活用する可能性がある。米中が域内で軍事的に衝突する場合、在韓米軍の介入や支援案を講じる可能性があるということだ。米国防総省が今年から進めている在韓米軍を含むインド太平洋司令部の見直し作業もその一環と見ることができる。
軍関係者は、「米中対立が『臨界点』に突き進むほど、北朝鮮に対する防衛を担う在韓米軍の効用に疑問が提起される可能性がある」と指摘した。今後、米中対立の様相によって、在韓米軍の規模と役割がどのような方法であれ影響を受ける可能性があるということだ。
在韓米軍をめぐる国内の変数も警戒しなければならない。10月にワシントンで開かれた韓米安保協議会議(SCM)で両国は、戦時作戦統制権(戦作権)の移管にはっきりと意見の相違を見せた。韓国の早急な移管方針に米国は北朝鮮の核の高度化など安保条件が悪化した状況で期限を決めて移管を強行すれば、両国軍と国民を危険にさらす恐れがあると主張する。条件を満たした後に移管することは、バイデン政権も守ることになるとみられる。このような状況で、韓国が戦作権移管を軍事主権の問題で接近して強行する場合、在韓米軍の不安定性を加重させ、ともすれば在韓米軍を自主国防の障害に転落させる愚を犯す恐れがある。
合同軍事演習中止の長期化も心配だ。対北朝鮮関係と新型コロナウイルスの感染拡大で、3年間大規模な合同軍事演習が中止になり、有事に韓米の対北朝鮮抑止力に空白が生じる恐れがあると懸念されるためだ。騒音問題などで実射撃訓練が中止になるなど在韓米軍の訓練不足も深刻化している。
軍内外では、在韓米軍問題がトランプ政権では駐留経費負担問題を媒介とした「一次方程式」だったなら、バイデン政権では国内外の変数が複合的に作用する「高次方程式」になると懸念されている。在韓米軍は、韓米連合防衛の主軸であり、域内のバランサーということに異論の余地はないだろう。北朝鮮の挑発への抑止と中国牽制という米国の戦略的構図で韓国の安保国益を最大化するには、在韓米軍の安定的な駐留が欠かせない。このためにより精巧で慎重な同盟戦略を講じなければならない。
在韓米軍を北朝鮮核交渉用のカードやテコとする一部の見方は、中朝を誤った判断に導き、韓半島および域内の不安定性を自ら招く危険千万な認識に相違ない。韓半島をめぐる北東アジア安保情勢の激変期に、「井の中の蛙式」在韓米軍アプローチは、韓米同盟と大韓民国の安保に何の役にも立たない。