2007年のイラク戦争当時、イラク・バスラのある取調室。英国軍の迷彩服を着た軍人2人が、反乱容疑者の前に立った。尋問を引き受けた軍人たちが、つばを吐きながらこのように言った。「もうお前はおしまいだ。お前の態度について申し訳ないと言いなさい。この滅びる殺人鬼。お前たちのうち一人は、首をつられるだろう。誰になるか、お前だろうか?」
英紙ガーディアンは、バスラの取調室の会話の場面を入手して報じた。しかし、尋問者たちからは何の情報も得られなかったり、辛うじて確保した情報も、そのほとんどが完璧な嘘だったことが、結局明らかになった。
著者は精神的・身体的圧迫と拷問は、情報を得るのに全く効果がないと説明する。だからといって温かいお茶を差し出して懐柔することも説得力があったわけではない。相手をだまして、話したくない本音を引き出す「うその疎通」は長続きしなかった。
20年余りの間、殺人、強姦、児童性搾取、テロリズムなどを研究してきた著者が、代案として提示したのは「ラポール」(関係作り)だ。それならラポールをうまく作ることは、生まれつきの社交的性格によるものだろうか。いいえ、著者たちはラポールを形成する要素である率直さと共感、自律性、復記を理解すればいいと言う。このうち、相手から聞いたキーワードや感情を振り返る復記は、対話の主導権を握る強力な方法なので重要だ。
しかし、すべての対話の状況がまったく同じではない。この時、いわゆる「アニマルサークル」を利用して他人の性向を把握し、場合に合わせてラポールを形成しなければならない。著者は理解しやすいように、人間の主な意思疎通の方式である対立、順応、統制、協力を、これを象徴する動物に代入して図式化した。
ややもすれば、素材が決まりきったものように見える可能性もある。しかし、この本は豊富な実際の事例をもって、凶悪犯罪者だけでなく、職場の上司、言うことを聞かない子どもたちにも通じる対話法を具体的に案内している。私たちは往々にして、なんの誤りのない鍋をたたいて、ため息をつきながら、「ワンオペ家事」に対する不満を表わす。家族は掃除を手伝っても、形式的な助けにとどまる時が少なくない。この時、どうすれば葛藤なく、直接対話できるのかをこの本が教えてくれるだろう。
キム・テオン記者 beborn@donga.com