「西学アリ」と呼ばれる米個人投資家が、ウォール街の大手投資会社の空売りに対抗して、米ゲーム販売のゲームストップ株を集中的に買いに動いた背景には、新型コロナウイルスの感染拡大にともなう経済難と格差による個人投資家の相対的剥奪感と怒りがあるとみられている。特に、新型コロナウイルスで失業と強制退去の危機に直面した若い投資家が、コロナ渦でも富める者は富む現実を目の当たりにし、ゲームストップ株を買うことを「一種の復讐の機会」と考え、積極的に動いたと分析されている。
最近、米ネット掲示板「レディット」などには、ゲームストップ株の空売りを主導した有名ヘッジファンド、メルビン・キャピタルを批判する多くの書き込みがあった。ある投資家は、「2008年の金融危機の時10代前半だったが、当時の衝撃をはっきりと覚えている。メルビン・キャピタルは当時私が嫌悪した全てのことを象徴する」とし、ウォール街の大手投資会社を批判した。彼は、ゲームストップ株を買うことを決めたのは、金融危機の時、自分と周囲の人が受けた経済的苦痛のためだと繰り返し強調した。
情報技術(IT)の発展でデジタル機器に慣れ親しむ若い投資家が増えたことも個人投資家の地位と影響力を育てた。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、「過去には株取引のために取引額の5%以上の手数料を払わなければならなかったが、今はいつでもどこでも無料で株を売り買いできる」と診断した。政界の支持も加勢した。富裕税などを主張した民主党の強硬進歩派、エリザベス・ウォーレン上院議員は、「ヘッジファンドと私募ファンドが株式市場を自分たちの個人カジノのように扱ったため、多くの人が犠牲になった」と述べ、大手投資会社を非難した。共和党のテッド クルーズ上院議員、民主党のアレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員も、個人投資家のゲームストップ株の取引を制限したオンライン取引プラットフォーム「ロビンフッド」を批判した。
これに対して、ゲームストップ株の空売りに加担した有名投資家も次々に白旗をあげている。ゲームストップ株の空売りを宣言し、個人投資家の標的になったシトロン・リサーチのアンドリュー・レフト最高経営責任者(CEO)は先月29日、ユーチューブとツイッターを通じて「空売りの調査を中止する」と発表した。
一部では、今回の事態を2021年版「ウォール街を占拠せよ(Occupy Wallstreet)」デモ運動と見ている。11年9月、ウォール街の金融会社の一部の若い職員が、ニューヨーク・マンハッタンのズコッティ公園で、「金融危機の渦中でも、天文学的な給与と賞与金を受け取ったウォール街の経営者が金融危機の真の主犯」と批判した。これに同調する人々が増え、世界各地で「1%対99%」の社会を批判する同様のデモが相次いだ。「ニューヨークの若い共和党員」という市民団体は先月31日、ズコッティ公園で、「ウォール街を再び占領せよ」というデモを行った。
兪載東 jarrett@donga.com