Go to contents

予言になった肖像画

Posted February. 18, 2021 08:15,   

Updated February. 18, 2021 08:15

한국어

1886年、パリ・サロン展の主人公は画家ではなく科学者だった。ほかならぬフランスの微生物学者ルイ・パスツールだ。なんと3人もの画家が、氏の肖像画を描いて出品した。その中で、アルベルト・エデルフェルトの作品は、批評家らの賛辞と共に、大衆にも大きな人気を集めた。フランス政府は、このフィンランドの画家に最高勲章であるレジオン・ドヌールまで授与した。パスツールの肖像画は、なぜそんなに多くの人気と栄光を享受したのか。

19世紀、多くの北欧画家のように、エデルフェルドも20歳でパリに美術留学した。優れた観察力と繊細な描写力で武装した写実主義の絵で早くからサロン展で認められたが、そうそうたるフランスの画家たちと競争して成功するのは容易ではなかった。11年間の無名生活に耐えてきた氏に、初めて名声をもたらした絵が、まさにこの肖像画だった。当時64歳だったパスツールは、フランスで最も有名な科学者であり、人類を救った英雄として称えられていた。鶏コレラと炭疽菌ワクチンに続き、1885年に狂犬病ワクチンの開発まで成功したためだった。最初のワクチンは、1796年、英国の医学者エドワード・ジェンナーが発見したが、免疫学の画期的な発展を成し遂げたのはパスツールだった。ジェンナーが牛から抽出した牛痘で天然痘の予防法を突き止めたことに着目したパスツールは、ウサギを利用して狂犬病ワクチンを開発した。絵の中のパスツールは、最新の実験装置でいっぱいの実験室にいる。片手には実験ノートを、もう一方の手にはガラス容器を持って、その中を注意深く観察している。瓶の中に入ったのは、狂犬病に感染したウサギの脊髄だ。著者は、氏について、研究に没頭する落ち着きのある科学者の典型だと説明した。

実際、この絵は、狂犬病ワクチンが研究中であった1885年春に描かれた。だから輝く成就を記念するのではなく、成功を祈願する絵なのだ。切に望めば叶うという。同年7月、パスツールは狂犬病ワクチンの初の臨床試験に成功する。予言になってしまったこの絵が公開されると、熱狂と賛辞が降り注いだのは当然のことだった。