中世時代の美術作品がルネサンス時代の絵に比べて平面的な理由は、キリスト教の影響によるものだということは広く知られている事実だ。キリスト教が392年、ローマ帝国の国教として宣言された後、芸術を行う目的はひたすら礼拝だった。聖書の内容が伝えられればそれまでだったので、画家たちは前でも横でも、遠くでも、それが何なのか理解できるほどに絵を描いた。11~13世紀の十字軍戦争でキリスト教が力を失い、貴族と裕福な商人が力を持つようになると、芸術そのものとしての絵が描かれ始めた。
ありきたりで軽い美術書にもなり得たこの本に、著者が一匙追加した砂糖はまさに音楽だ。同じ時代的背景から変貌した音楽と美術を同時に扱うことで、人々がより身近に芸術に近づけるようにした。
例えば、中世美術を扱う章では、教会音楽の発展背景を一緒に説明するというやり方だ。大半の音楽が礼拝のために作曲された中世時代は、音楽史で多声音楽が最も活発に発達した時期だ。今もキリスト教の礼拝で歌われているグレゴリアン聖歌も、この時期に作曲された。教会の力が弱まってから、三位一体を象徴するための3拍子から抜け出した2拍子の音楽が作られ始め、より複雑で多様な曲が誕生した。美術史に音楽史を、音楽史に美術史を合わせると、各時代の芸術がさらに立体的に感じられる。
著者は自らを、「キュレーターチェリスト」と呼ぶ。チェロを専攻し、フランスのベルサイユ国立音楽院を首席で卒業した音楽家であり、韓国博物館や美術館の準学芸員試験に合格したキュレーターでもあるからだ。音楽と美術の境界を崩すための努力が認められ、2021年にフォーブス・アート・アンド・カルチャー(Art&Culture)部門の2030パワーリーダーに選ばれた。
各章ごとに、本文とともに楽しむのに良い曲も紹介した。新しい章が始まるページに印刷されたQRコードを撮ると、当該時期の音楽的特色をよく表現した曲を聞くことができるユーチューブページにつながる。まさに「音楽が流れる美術館」が繰り広げられる。
チョン・チェウン記者 chan2@donga.com