正社員の採用公告をし、いざ雇用契約書を書くときは、契約職の書類を出す会社、防犯カメラで監視しながら業務態度を指摘する上司、トイレも5分以内に行ってこなければならない税務法人で働いて倒れた高校3年生の現場実習生…。.
労務士の著者は、職場での様々な「パワハラ」を並べながら、仕事と人間について省察する。パワハラに苦しめられ、体を崩すほど過重な業務に苦しみながらも、職場から離れられない理由は何だろうか。給与、所属感など会社が多くのものを提供する上、仕事と自分を同一視し、自分を後回しにするためだと著者は分析する。他の職場を見つけることができないという恐怖も一役買っている。パワハラをする人が去れば、問題は解決すると思う。しかし、著者は断言する。このすべてを傍観した会社そのものが問題だと。
いじめられたら、自分のせいにせず、異議を申し立てなければならない。具合が悪くなったら病院で治療を受けなければならない。労災を申請できる期間は、病院治療を受けた日から3年だ。暴言を吐く上司と目を合わせない、大声を上げる上司に答えない、性差別的冗談に笑わないように小さくとも抗弁するのも方法だ。
ページをめくると、自分が携わった組織はどうか、問題は何かをじっくり考えるようになる。退職給与の受け取り方や賃金未払いへの備え方などを付録として盛り込んでいるが、具体的な指針書というよりは、職場と人との関係、仕事と人との価値についての考え方を盛り込んだエッセイと感じられる。
著者は頼む。過度な労働の末はバーンアウトがあるので、体を崩す前に退社するのが自分を守ることだということを忘れてはならないと。考えが複雑になればなるほど、自分だけを優先順位に置く時、最も賢明な選択ができると。この瞬間も悩んでいる会社員なら、強力な「石直球(周りを気にせず言いたいことをストレートに言うこと)」と思われるだろう。
孫曉林 aryssong@donga.com