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教科書と現場の違い

Posted August. 03, 2021 08:19,   

Updated August. 03, 2021 08:19

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紀元前216年8月2日、ほこりと地熱が地から立ち上り、焼けつくように蒸し暑かったイタリア南部のカンナエ平原で歴史的な戦いが繰り広げられた。テレンティウス・ウァッロが指揮するローマ軍約9万人と、ハンニバルが指揮するカルタゴ軍5万人が対決した。

この歴史的な場所を訪ねることも容易ではない。道路事情もよくなく、記念館は週の半分しか開いていない。15万人近い兵士と2万頭の馬で覆われた野原には、オリーブの木だけが生い茂っている。同日の戦いは、戦術家と士官学校の生徒が最も多く研究する戦いとなった。カルタゴの一方的な勝利も勝利だが、ローマ軍5万人ないし7万人が現場で虐殺された。2倍も多い敵を相手に勝利することも難しいが、大砲や機関銃もなかった時代に、このように敵を完璧に殲滅することは不可能に近い。ある学者は、カンナエの戦いとは言わず、カンナエ殲滅戦と呼ぶ。

この勝利の秘訣は何だろうか。ローマ司令官ウァッロは、過去を頼りに戦った。ローマ軍が勝利した、最良の戦術に頼り、兵力を一度に投入して戦術の威力を高めようとした。ハンニバルは、ローマ軍の戦術を予測して創造的に対応した。過度な兵力は戦闘現場で弱点になるという事実を見抜き、歩兵隊形を巧みに動かして、ローマ軍が狭い空間にさらに密集するように誘導した。一言で定義すれば、教科書と現場の違いだ。教科書は状況と変数を固定させる。木を押すと後ろに倒れる。現場は違う。木を押すと、木が反動で戻り、隣の岩に触れて石の山を降り注がせる。教科書は模型で、現場は生きている生物だ。教科書は正解ではなく、現場を理解するための仮想の空間だ。ウァッロが、この教科書と現場の違い、教科書の利用法を知らなかったのが不幸だった。

カンナエのオリーブの森を見ながら、そんな思いがした。あの日、現場にいた人々は木ではなく、生きている人間たちだった。

歴史学者