リアリズム美術、リアリズム文学はあるが、リアリズム音楽もできるかな? 結論から言えば、目に見えない音楽でもリアリズムの具現が可能だというのが、ソウル大学作曲科(理論専攻)の教授として在職中の著者の説明だ。
本では防弾少年団(BTS)が2017年に発表した「春の日」を事例として紹介している。ゆっくり繰り返される叙情的旋律、切実な懐かしさが感じられる歌詞など、曲の持つ感じと音響は、聞き手を追悼の感情を感じさせる。BTSはこの曲について、「セウォル号の追悼」に関する内容だとは言わなかった。しかし、曲を聞く人なら、現実で起きたある出来事を頭の中でそれぞれのやり方で再現する。「音楽は結局、社会を抱く」と著者は言う。
クラシックから現代音楽まで、多くの曲が持つ美しさとその意味について語っている。これは音楽美学とも言い、哲学の一分野である美学と音楽学が出会う学問だ。大衆に慣れないこの概念について、著者はドビュッシーの「月の光」、シューベルトの「鱒」など、よく知られているクラシックから、イナルチの「虎が下りてくる」、BTSの「春の日」を例に挙げて理解を助ける。
例に挙げた曲が耳慣れたとしても、読者に本はやや不慣れな感じを与えることができる。携帯電話の中のストリーミングサービスで音楽に触れる時代に、「適切な演奏が音楽的意味を作る」「音楽は精神を自由にする」とか「絵画は見られないものは見るようにすることができないが、音楽は聞くことができないものを聞かせることができる」という哲学的思惟は、私たちがいつも聞いている音楽をもう一度考えさせる。アドルノ、ニーチェ、ルソーなどの有名哲学者たちが、音楽の価値について評価した内容も興味深い。
音楽の未来変化についても語った。これから音楽はどう進化するのだろうか。
人類が蓄積した音楽理論をスポンジのように速く吸収する人工知能(AI)作曲家が登場する時代。
著者は「まだ人間の作曲法を模倣する水準だ」としながらも「AIが大衆化すれば、音楽創作は新しい局面に入るだろう」と見通した。
キム・ギユン記者 pep@donga.com