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ニュートンはなぜ複雑な幾何学で本を書いたのか

ニュートンはなぜ複雑な幾何学で本を書いたのか

Posted December. 04, 2021 08:58,   

Updated December. 04, 2021 08:58

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古典物理学の真髄とされるアイザック・ニュートンの『プリンキピア』は、楕円、直線、円などの図形が多い。数式で満たされた最近の物理学の本とは全く異なる。ニュートンが図形で説明した物理学理論は簡単な数式でも説明できる。「数学の天才」ニュートンが強いて代数ではなく幾何でプリンキピアを書いた理由は何か。

 

同書を書いたキム・ミンヒョン英エジンバラ大学碩座教授(数理科学)は、この単純な質問を通じて、1571年の「レパントの海戦」後、イスラム圏と分離したヨーロッパ史の巨大な流れを論じる。キム氏は、ソウル大学数学科を早期卒業し、韓国人では初めてオックスフォード大学の数学科教授となった世界的な数学者だ。

キム氏によると、代数学はイスラム、幾何学は古代ギリシャで隆盛した。例えば、イスラム圏ではローマ数字より掛け算に便利なアラビア数字を使い、11世紀にすでに3次方程式の理論を体系的に確立した。これに対し、古代ギリシャでは紀元前6世紀のピタゴラスの定理のように幾何学で輝かしい発展を成し遂げた。ヨーロッパは中世末にイスラム圏を通じて代数学と古代ギリシャの幾何学を受け入れ、14世紀のルネサンス時代を準備した。

しかし、1453年のオスマン帝国のコンスタンティノープル陥落、1571年のレパントの海戦を経て、地中海の東と西をイスラムとヨーロッパが二分する状況になる。15、16世紀以後、東西文明の分岐が本格化したのだ。これにより、イスラムで習得された代数学より古代ギリシャ文明で使われた幾何学を強調する流れがニュートンのプリンキピアに反映されたというのが著者の見解だ。キム氏は、「社会文化的要請が、科学の進化に強い影響を及ぼす可能性がある」と強調する。

最終的に、数学の進化方式を研究すれば、ヨーロッパのアイデンティティについての新たな事実を明らかにできるという結論に達する。一見して関係なく見える数学と歴史学が緊密な接点を共有しているという事実は興味深い。


金相雲 sukim@donga.com