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引き算の美徳

Posted February. 17, 2022 08:32,   

Updated February. 17, 2022 08:32

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正方形のキャンバスの上に、赤や青、黄色の面と5つの黒い直線が描かれている。この単純な絵は、抽象美術の先駆者ピート・モンドリアンの代表作だ。「これくらいなら、私でも描ける」と思うかもしれないが、これでも美術史を輝かせた偉大な傑作だ。とても簡単に描かれたようだが、なぜ名作なのか。画家は、この絵を通じて何を表現しようとしたのだろうか。

オランダの敬虔なキリスト教の家庭で育ったモンドリアンは、20歳の時、アムステルダム美術アカデミーに入学し、本格的な画家の道を歩んだ。印象派風に描いていた彼は、39歳になった1911年、パリに行って立体派の絵を研究した。この時から画風に大きな変化が生じる。対象を写実的に描く構想画から脱し、抽象を試みた。線と形は次第にシンプルになり、色彩数も果敢に減らした。1920年代以降からは、対象の再現を一切拒否し、完全な抽象に到達することになる。

この時期のモンドリアン絵画の特徴を一言で表現すると、単純さと節制だった。形態や明暗、遠近法などの伝統的な造形要素を果敢に捨てて、垂直、水平の直線と三原色、無彩色だけを使って描いた。新造形主義と名付けられたこのような様式は、世界と人間の霊的本質を探求する神智学的思想に基づいたものだ。美術を通じて秩序と均衡の美しさを表そうとしたモンドリアンは、「最も基本的なものが最も美しい」と信じた。また、自分の絵は「宇宙の真理と根源を表現する」と主張した。彼の芸術的信念を圧縮して見せてくれる代表作が、まさにこの絵なのだ。

足すのはやすいが、抜くのは難しい。満たすことよりは、差し引くことが難しい。人生もそうだ。欲を満たすことは容易だが、捨てることは容易なことではない。モンドリアンだからといって、なぜより多くの色を使おうとしなかったのだろう。なぜもっと自由に描こうとしなかったのだろう。それを取り除くことと自制心、そして基本に忠実であること。モンドリアンが絵を通じて伝えようとしたメッセージも、まさにそのような「引き算」の美徳ではないか。

美術評論家