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チャイコフスキーのウクライナ

Posted March. 02, 2022 08:35,   

Updated March. 02, 2022 08:35

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2022年北京冬季五輪の閉会式で、チャイコフスキーのピアノ協奏曲1番の導入部が流れた。正常な状況なら、マススタート50キロ種目の優勝者がロシア選手だったため、ロシア国歌が流れるべきだった。閉会式は、マラソンに該当するその種目の授賞式を兼ねた席だった。ところが、ロシアが国家主導の禁止薬物服用で制裁を受けているため、ロシア作曲家の協奏曲が流れたのだ。

いつ、どこで聴いても美しいチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番は、ウクライナと深い関わりがある。最初の楽章と最後の楽章は、ウクライナ民謡からテーマとメロディーの一部を借りてきた。チャイコフスキーは、視覚障害者の楽士が街で歌う美しい歌を心に留めていて、作曲に活用した。ウクライナの民俗音楽が持つ美しいメロディーと叙情性は、彼を魅了させた。音楽だけではなかった。ウクライナのすべてのものが、彼を引き付けた。ロシアのヴォトキンスクで生まれたが、祖父の故郷ウクライナを自分の故郷だと考えた。そのうえ、彼がとても愛した2歳下の妹がそこに住んでいた。彼はそこで1年の数か月を過ごした。「私は、モスクワとサンクトペテルブルクでは得られなかった心の平和を、ウクライナで見つけました」。そこは彼にとって、平和と癒しの空間だった。彼は創作に必要な心の平和をそこで求め、ピアノ協奏曲1番や交響曲2番を含む約30曲を作曲した。ウクライナは、彼を心理的行き詰まりから解放した。すると音楽が、美しくてきらびやかな音楽がすらすらと流れてきた。

彼にインスピレーションを与えたウクライナが、戦争に巻き込まれている。彼の祖父がかつて暮らしていたキエフを、ロシア軍に踏みにじられた。ロシアは、チャイコフスキーのピアノ協奏曲1番を選び、世界の人々の耳に聞かせることだけはわかっていたが、彼の音楽に染み込んでいるウクライナに対する愛情はわかりえなかった。彼らは、ちゃんと彼の音楽を聞くべきだった。「チャイコフスキーの音楽、その平穏の中に戻ることを…」

文学評論家・全北(チョンブク)大学碩座教授