米国主導のインド太平洋安全保障協力枠組み「クアッド(Quad)」が24日、東京で行われた首脳会議で、中国の海上活動に対するリアルタイムの監視システムを導入することにしたことは、中国の海上覇権の追求を遮断するという明白な信号とみられる。台湾海峡と尖閣諸島(中国名・釣魚島)がある東シナ海、中国と東南アジア諸国が領有権で争う南シナ海や太平洋など、中国周辺の海で包囲網を構築するということだ。特に、中国が海上領有権紛争地域に、事実上の準海軍部隊である海上民兵隊を派遣する「グレー戦術」を展開しており、クアッドはこれらの活動を阻止する計画だ。米中間の軍事衝突の緊張が高まるものと予想される。
クアッドはまた、中国の華為技術(ファーウェイ)などが主導している第5世代(5G)移動通信装備の市場からの中国排除に向けた先端技術協力の強化にも合意した。インド太平洋経済枠組み(IPEF)発足に続き、クアッド首脳会議を通じて、中国に対する貿易・技術・海上安全保障など全方向の牽制体制を構築したのだ。中国は、米中対立の新たな激戦地に浮上した南太平洋、ソロモン諸島に最高位級代表団を派遣することを決めるなど、対抗に乗り出した。
●クアッド、中国の準海軍部隊の活動抑制で合意
バイデン大統領はクアッド首脳会議で、「世界が転換的な瞬間を迎えた」とし、「私たちは暗い時代を生きている」と述べた。また、「民主主義対権威主義の構図であるウクライナ戦争は欧州だけの問題ではなく世界の問題だ」と強調した。岸田文雄首相は、「インド太平洋で同じようなことを決して起こさせてはならない」と述べた。
クアッド首脳たちが合意した人工衛星基盤のリアルタイムの海洋追跡システムは、自動船舶識別装置(AIS)を消して移動する中国船舶の不法操業だけでなく、中国海軍の活動を支援する海上民兵隊の活動をリアルタイムで追跡し抑制する。
南シナ海ではシンガポール、インド洋ではインド、南太平洋ではソロモン諸島とバヌアツに設置された拠点基地を通じて衛星基盤海洋追跡システムを構築すると、バイデン政権は明らかにした。このため、中国の海上民兵隊だけでなく中国軍艦の移動もリアルタイムの追跡と監視が可能になる見通しだ。青い制服を着て「リトル・ブルーマン」と呼ばれる海上民兵隊は、中国海軍の教育と支援を受ける準海軍部隊だ。中国は、南シナ海など領有権紛争地域に海上民兵隊を不法操業の船舶と共に投じ、他国の海域への進入を阻止する戦術を展開している。
中国の黙認の下、東シナ海などで対北朝鮮制裁を違反し、洋上で違法に物資を積み替える「瀬取り」を行っている北朝鮮船舶に対する監視も一層強化されるものとみられる。
●中国、ソロモン諸島に代表団派遣で対抗
中国の王毅外相は今週、約20人の代表団を率いてソロモン諸島を訪問する予定だと、ソロモン諸島が23日(現地時間)、明らかにした。ソロモン諸島に軍艦を派遣できる安全保障協定を結んだ中国が、ソロモン諸島を拠点基地とするクアッドへの対抗に出たのだ。
クアッドはまた、核心技術のサプライチェーン(供給網)に対する共通原則を発表し、5G移動通信供給業者の多様化はもとより、中国が掌握した通信装備に依存しないよう無線接続網を開放型に変える「オープンRAN(Open Ran)」に向けて協力に乗り出す計画だ。
ワシントン=ムン・ビョンギ特派員 東京=イ・サンフン特派員 weappon@donga.com