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「ファンタジー」が「生業」と出会った時

「ファンタジー」が「生業」と出会った時

Posted May. 30, 2022 09:18,   

Updated May. 30, 2022 09:18

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「そうだね、馬鹿だね。ケチョルは馬鹿だから」。彼女たちはまるで誓い合うように、そのように締めくくったが、その口調にはどこか共犯者同士のひそかさがあった。(中略)ケチョルが苦労して働かなくても、1日3食のご飯と横になる寝床を得ることができるのも、その半分以上がそのような妻たちのおかげだろう。(李文烈の「匿名の島」)

同書に会ったのは、約20年前に論山(ノンサン)訓練所での後半期の教育の時だった。携帯電話どころかテレビも禁止され、唯一のレジャーは昔の小説数冊が全てだった。その中で、「匿名の島」は、藁半紙材質の表紙と「ウッニダ(「します」のかつての標準語)」の正書法まで旧式だったが、すぐに私を魅了した。知能は落ちても、魔性の魅力を持った田舎の青年と、彼を性的に貪る村人たちの隠密な心理に魅了された。血気盛んな訓練兵の同期たちの間でもこの本は人気であり、「私もケチョルになりたい」というのが私たちの口癖だった。

最近、私の心の中のファンタジー、ケチョルを番組に溶け込ませるチャンスができた。この間、SNLのホストとして俳優のイ・サンヨプ氏が出演したが、彼が田舎の青年に扮して意図しない魔性で、町内の女性たちとソウルから降りてきた青年・申東曄(シン・ドンヨプ)の愛を独り占めするというコントだった。80分に迫るSNLの公演を事故なく責任を負わなければならないという圧迫の中でも、このコントを演出する間、私の口元に笑みが絶えないことを発見した。

個人的なファンタジーと職場の仕事は一見、水と油のように見える。それが直ちに成果につながるという保障もない。だが、その2つが混ざった時、「働く面白さ」という化学作用を起こす。営業マンが、許英萬(ホ・ヨンマン)画伯の漫画「セールスマン」のファンタジーを仕事に適用しようが、弁護士がゲーム「逆転裁判」のファンタジーを法廷で噴出しようが、このような「ファンタジー溶け込まし」という行為が、会社員にもう少し勧められる雰囲気になることを希望する。そうしてこそ、戦争のような仕事中に、そっと笑いを誘うことができるのではないだろうか。