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気高い老人

Posted July. 21, 2022 09:04,   

Updated July. 21, 2022 09:04

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生きていくのに水は重要だ。水が流れる所に都市は栄え、きれいな水は生命の維持に必要だ。水はかなり以前から一つの商品でもあった。17世紀のスペインでは、水を売り買いすることは日常だった。ディエゴ・ベラスケスは、セビーリャの人々の水の取引の様子を絵に残した。

ベラスケスはスペインのバロック美術を代表する画家だ。フェリペ4世の宮廷画家として活躍し、多くの傑作を残した。この絵は、ベラスケスの初期の作品だ。故郷セビーリャを離れてマドリードに向かう直前に描いたもので、当時ベラスケスの年齢は10代後半か20代初めだった。絵はベラスケスの繊細で優れた描写力だけでなく、ベラスケスがどれほど人物の心理表現に卓越していたのかがよくわかる。絵の右の水売りの老人は、左の青年に水の入ったグラスを渡している。グラスの中には水に味と香りを出すための黒いイチジクの実が入っている。今水を注いだところなのか、老人が持つ大きな陶器の壺の表面には水滴が流れている。2人は、色々な面で対照的だ。老人は黒く焼けた肌に破れた服を着ているが、青年は白い肌で身だしなみが整っている。ひと目で異なる階級に属する人々だ。よく見えないが2人の間には水を飲んでいる男が描かれている。興味深いのは彼らの視線だ。目を全く合わせていない。水売りはただ水を売るだけで、いかなる感情も表わしていない。若きベラスケスは、この主題にかなり魅了されたようだ。ほぼ同じ絵を3点も描いた。

老人と青年が視線を合わせない理由はわからない。ただし、下流層の水売りの老人と上流層の青年をつなぐ媒介が水という事実だけは明らかだ。画家は、水売りの老人を聖者や哲学者のように気高く描いた。これはもしかすると、若き画家が望む自身の未来の姿かもしれない。たとえ成功できなくとも、貧しくとも、気高く老いていくことを望むのだ。

美術評論家