南北戦争の戦史を読んでみると、戦闘の勝敗を決める要因として指揮官のリーダーシップ、戦術能力の比重がひと際大きく感じられる。ストーンウォール・ジャクソン(南部連合の将軍)のケースを除けば、印象深い戦術的な動きがないにもかかわらず、そうだ。南軍と北軍は、同じ環境、同じ文化で育ち、同じ士官学校出身で、同じ装備で戦ったので、比較するのが指揮官の個人的能力だけだからかもしれない。
南北戦争でリーダーシップの重要性と内容について、独特の見解を示したのは、北アフリカ戦争でドイツ軍エルヴィン・ロンメル将軍を撃破した功労で戦争英雄になった英国軍バーナード・モントゴメリー元帥だ。モントゴメリーの見解はこうだ。南軍総司令官のロバート・リー将軍は、紳士であり人格者だった。リー将軍は部下に大声を上げたこともなく、権威的な命令を下すこともなかった。部下の失敗は、多少のことなら目をつぶった。このような評価だけを見ても、徳将の中の徳将だ。
このようなリーダーシップの背景には、南軍指揮部の人脈がある。リー将軍が属したバージニア軍閥は、米軍最大の地域派閥だった。戦争英雄を多く輩出したので、身内びいきで無能な指揮官を登用して戦争に敗北したとは言えない。しかし、蔓延した人情主義、激励と義理が、時にささいな命令不服従や過度な自律を生むが、ゲティスバーグの戦いのような決定的な瞬間に、このようなことが致命的で取り返しのつかない禍となった。
一方、北軍の場合、リンカーンは軍に対する情報や人脈が全くなかった。北軍指揮部の人脈は南軍とは質が異なり、無能な官僚型将軍が首脳部を占めた。そのため、戦争の中盤まで北軍司令部は戦争史に長く語られる間抜けなエピソードを生産する。
リンカーンは、そのたびに容赦なく交代することで対応した。激しい試行錯誤の末、戦争の運命を変える指揮官を発掘することになり、それが勝利の要因になる。戦争はリスキーであるがゆえ、人材登用にも冒険と勇気が必要だ。モントゴメリーは、これを言いたかったのではないか。
歴史学者