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「ホースボーイ」

Posted August. 03, 2022 09:16,   

Updated August. 03, 2022 09:16

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子供は、隣の馬たちがいるところに駆けつけ、仰向けになってくすくす笑った。かかとで踏まれるかもしれない危険な瞬間だった。しかし、馬たちはびくともしなかった。5頭のうち、ボスに当たる荒々しい雌馬が頭を下げて子供をなめた。自主的な服従のしるしだった。

驚くべきことだった。あの子は誰だろうか。言葉がわからず、6歳になっても所構わず大小便を排泄し、暇さえあれば裂けるような大声を出した。自閉症のためだった。ところが、馬たちが彼に服従したのだ。馬が親より子供をもっとよく理解しているのだろうか。彼の両親は、自閉症のある動物学教授に諮問した。「動物たちはイメージで考えています。僕もそうだし、多くの自閉症児もそうです。動物たちは視覚的な思考をします。それで自閉症をもつ人たちは、しばしば動物たちとよく通じます」。子供の変化を引き出したのは、馬だけではなかった。子供はボツワナから来たブッシュマンのシャーマンたちと一緒にいる時も、状態が良くなった。親は藁にもすがる気持ちで、馬の故郷モンゴルに行くことにした。通帳をはたいて飛行機のチケットを購入し、他の経費はその過程を記録するという執筆提案書で調達した。馬とシャーマンを信じるというのは荒唐無稽だったが、「あなたにできる最悪のことは何もしないこと」という動物学教授の忠告に従うことにした。

ところが驚くべきことが起きた。馬に乗って山を越えて、トナカイ部族のシャーマンに会って帰る途中、子供が排泄をコントロールし始めた。投げかけた言葉に返事もし、慢性的な怒りが爆発することもなくなった。シャーマンの予言どおりだった。ルパート・アイジャクソンは息子ローワンの自閉症が好転する過程を、「ホースボーイ」(馬少年)というノンフィクションで出版した。自分のものでなければ、他人の傷と苦痛さえも消費しようとする世の中だが、自閉症児を子供に持つ親の絶望ともがきと限りない愛は、消費されることを拒否する。読者は彼らの話を読みながら、それが自分のことになるまでは関心を持たない私たちの恥ずべき姿を振り返る。


ソル・ジョンヒ記者 s24jeonghee@donga.com