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育児と通勤…働くシングルマザーの日常をスリラーっぽく演出、映画「フルタイム」

育児と通勤…働くシングルマザーの日常をスリラーっぽく演出、映画「フルタイム」

Posted August. 09, 2022 08:27,   

Updated August. 09, 2022 08:27

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フランス映画「フルタイム」は、眠っているジュリー(ローレ・カラミー)の息づかいを聞かせることから始まる。いつでも起きそうで、眠りは浅く息は苦しい。

ジュリーはシングルマザーであり、働くママだ。離婚した前夫は連絡が途絶えているうえ、養育費も渡さない。銀行からは融資金の返済が滞っていると、督促の電話がかかっている。育児は完全にジュリーの役目だ。二人の子供はなかなか言うことを聞かない。ジュリーは子供たちをベビーシッターに預けて、パリのあるホテルに追われるように出勤し、ハウスキーパーとして働きながら、息の詰まる一日を過ごす。

一人でやっと支えてきた彼女の日常は、大規模な交通ストライキで最悪の状況になる。公共交通機関の運行が止まり、ジュリーはヒッチハイクをするなど、さまざまな方法を試すものの、遅刻を繰り返す。結局、職場では解雇の危機に置かれる。その上、交通手段がなくて帰宅時間が遅くなると、ベビーシッターはジュリーに怒って仕事を辞めると言い出す。出産前に流通など市場調査の業務を手掛けていたジュリーは、この分野の会社で面接を受ける機会ができるが、誰も彼女と勤務を代わってくれない。夢を取り戻す機会がなくなるところだ。

エリック・グラベル監督は、交通ストライキと職場面接という変数が生じ、困難を越えて恐怖に陥ってしまったジュリーの日常を速い編集とエレクトロニックサウンドを活用して緊張感を演出した。おかげで退屈する暇がない。観客は、ジュリーの状況に没頭し、切迫感をそのまま感じることができる。

この映画は昨年、ヴェネツィア国際映画祭でオリゾンティ(新しい視線)部門の監督賞を受賞した。一人の女性の日常をスリラー映画の演出技法を使って描いたところが目立つ。俳優のローレ・カラミーは、みんなに罪人扱いされながらも耐えるジュリーの姿を節制力を持って表現し、共感を引き出す。床に座り込んで泣いたり怒ったりしたいが、ぎゅっと押さえつけるカラミーの目つきと表情を見れば、彼女が昨年、映画祭の同じ部門で主演女優賞を受賞した理由が分かる。18日公開。


孫孝珠 hjson@donga.com