「天然ガスの供給が減ると、私たちは『二重の打撃』を受ける。エネルギー源が不足するだけでなく、メーカーは医療用品などのいくつかの製品の生産を減らすほかない」
16日(現地時間)、ドイツ西部ラインラント=プファルツ州ルートヴィヒスハーフェンの世界最大の総合化学メーカーBASFの工場。ダニエラ・ライヒェンベルガー広報担当は、「天然ガスは製品の核心原料」と話した。ライヒェンベルガー氏は、ロシアの天然ガスの供給減でドイツ経済を支える製造業が大きな打撃を受けかねないと懸念した。
面積が10平方キロメートルにのぼるBASFの工場は、欧州に供給する天然ガスの77%を加工生産する。工団には、化粧品、医療用品、洗剤など様々なメーカーの物流トラック数十台が出入りした。
しかし、いつでも稼働が停止し、工場が閉鎖に追い込まれる可能性があるという危機感が高まっている。会社関係者は、「すでに天然ガスの供給が先月より約50%減り、生産稼働の速度が遅くなった」とし、「供給が需要の半分以下に下がる場合、工場を閉めなければならない」と話した。工団には、昨年韓国でも供給難が深刻だった尿素水やアンモニアなどの化学品生産工場が約200ある。BASFは先月、アンモニアの生産を減らした。来年、アンモニアを原料とする肥料の需給に支障が生じることが予想される。
ウクライナ侵攻後、西洋諸国の制裁を受けたロシアは、先月ドイツを通じてロシアの天然ガスを欧州に運ぶパイプライン「ノルトストリーム」を一時停止して再開したものの、供給量を従来の半分に減らした。ロシア国営ガス会社「ガスプロム」は31日~来月2日、メンテナンスを理由に欧州へのガス供給を一時停止すると明らかにし、エネルギー遮断の恐怖が大きくなっている。
最近、ひどい干ばつにまで見舞われ、BASFがある一帯の工場は、工業用水の不足で工場稼働率がさらに低下した。原材料を運ぶ船舶の通行量も、従来の利用可能規模の25%水準に減少した。ドイツでは、ガス供給危機が物価を刺激して経済活動を萎縮させ、2008年の金融危機以降、最悪の経済難が起こるという分析まで出ている。
欧州の天然ガスの価格は、オランダのTTF先物取引1メガワット時(MWh)276.76ユーロ(約37万ウォン)まで上昇した。1年前に比べてなんと1000%の上昇だ。電気料金が急騰し、フランスと英国の鉄鋼業者も工場の閉鎖を検討している。
エネルギー価格の上昇で、世界5位のエネルギー輸入国である韓国も打撃が避けられない。ファティ・ビロル国際エネルギー機関(IEA)事務局長は、東亜(トンア)日報の電子メールのインタビューで、「韓国のようにエネルギー輸入依存度が高い国は、特定国家の輸入依存度を減らし、原発と再生可能エネルギーを活用してこそエネルギー安全保障を強化できる」と指摘した。
趙은아 achim@donga.com