ドイツや日本、カナダなど各国政府と企業は、北米産電気自動車(EV)にのみ消費者補助金を支給する米国のインフレ削減法(IRA)の基準に合わせようと素早く動いている。米国内のバッテリー生産施設に追加投資し、中国産でないバッテリーのコア鉱物を確保するために国家間、企業間の協力も活発になっている。インフレ削減法によるEVの補助金を受けるための主要国の対応が激しくなっている。最近発効されたインフレ削減法には、バッテリーに使われる鉱物からEVの最終組立まで、米国中心のサプライチェーンを構築するというバイデン政府の強力な意志が盛り込まれている。
●日本、米国内バッテリー工場に追加投資
日本の自動車メーカー各社は、米バッテリー生産基地への投資に拍車をかけている。これまでハイブリッド車に集中するため、米国内のバッテリー供給網の確保に比較的遅れていた日本が、インフレ削減法の可決を受け、姿勢を変えたのだ。
トヨタは先月31日(現地時間)、米ノースカロライナ州に建設しているEVバッテリー工場に追加で25億ドル(約3兆4000億ウォン)を投資すると発表した。昨年発表した12億9000万ドルを合わせると、総投資額は38億ドル(約5兆1400億ウォン)に達する。ホンダも先月29日、LGエネルギーソリューションと提携して、44億ドル(約5兆9000億ウォン)を投じて米国にバッテリー合弁会社を設立する計画だと明らかにした。
●ドイツ、バッテリー鉱物の確保でカナダと協力
ドイツのオーラフ・ショルツ首相は先月22日、リチウムやコバルトなどの資源が豊富なカナダを訪問し、ジャスティン・トルドー首相との首脳会談で、天然ガスやバッテリー鉱物資源の開発に緊密に協力することにした。翌日、両国首脳が見守る中、フォルクスワーゲンとメルセデスベンツがカナダ政府と「EV用バッテリー鉱物の供給協力」をめぐる覚書(MOU)を交わした。ドイツの自動車メーカーがカナダのリチウム鉱山の開発に参加し、リチウムを優先的に供給してもらう内容だという。ショルツ首相は、「バッテリー鉱物のMOUは、天然資源と安保の面で同盟国間協力の立派な証拠だ」と述べた。
インフレ削減法によると、2023年からリチウムやニッケル、コバルトなどEV用バッテリーのコア鉱物の40%以上を米国または米国と自由貿易協定(FTA)を交わした国で採掘・加工されたものを使用してこそ、EV補助金の半分(3750ドル)を受け取ることができる。
フォルクスワーゲンは、インフレ削減法の公開直後の7月末、米テネシーEV工場の稼動を開始し、10月から車を顧客に引き渡すことができるようになった。第4四半期(10〜12月)にEV補助金の確保が可能になったのだ。
●カナダ、原産地基準の自国産の拡大に向けてロビー
カナダは昨年10月、インフレ削減法以前のバージョンである「より良い再建法(BBB)」が公開された直後から、「トップクラスロビー」を通じてカナダ産のEVにも補助金を支給しなければならないと主張してきた。当時、下院で可決されたBBBに言及された補助金の支給対象は、「米国産」のEVに限定された。カナダは、原産地の基準を「北米産」に拡大してほしいと要求した。昨年11月の北米首脳会談直後、ロイターは政府筋の話として、「トルドー首相が、バイデン米大統領との単独会談で取り上げた最初の議題は、EV補助金の原産地問題だった」と伝えた。
米国に工場がなく、補助金の恩恵対象から除外され非常事態になった現代(ヒョンデ)自動車グループの鄭義宣(チョン・ウィソン)会長は先月23日、米国を訪問後、帰国日程を先送りした。鄭会長は現地でインフレ削減法への対策に関する報告を受けながら、北米地域の事業を直接手がけているという。現代自動車はまず、5月に発表した米ジョージア州のEVの生産設備の新設計画を支障なく進めることに集中する方針だ。補助金の恩恵対象から除外された現代・起亜(キア)自動車のEVの販売台数が下がらないよう、車両価格の引き上げ幅を最小限に抑え、現地ディーラーに支給するインセンティブ(販売促進費用)を拡大し、価格競争力を維持する案も検討している。
李建赫 gun@donga.com