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犬のような人生

Posted September. 22, 2022 08:22,   

Updated September. 22, 2022 08:22

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古い陶器の壺の中に、ひげがもじゃもじゃの男が座っている。裸のような彼は、明るい昼間なのに手に提灯を持っていた。周辺に集まった犬4頭が彼を見つめている。一見乞食のように見えるこの男!まさにギリシャの哲学者ディオゲネスだ。彼はなぜ、あんなむさくるしい姿で犬たちに囲まれているのだろうか?

この絵を描いたジャン=レオン・ジェロームは、19世紀半ば、フランス・アカデミー美術を代表する画家だ。エコール・デ・ボザールの3代教授の一人で、50代の時は「生存している最も有名な画家」と呼ばれるほど名声が高かった。ジェロームは、この絵を教授になる前の30代半ばに描いた。

ディオゲネスは、「キニコス(kynikos)」学派に属する哲学者だ。ギリシャ語のキニコスは、「犬のような」という意味だ。彼らは、社会的慣習や制度を無視して世俗的欲望を拒否し、簡素に暮らしながら自然の中で自足する人生を強調した。まるで犬のように。ディオゲネスもやはり、たった一着の服と提灯、杖だけが彼が持っているものの全てだった。今、彼は真昼なのに明かりをつけた理由は、正直な人を探すためだ。しかし、表情はそれほど希望的ではない。彼の唯一の仲間である犬は、「私たちほど正直な人間はいない」と言っているようだ。もっとも、犬ほど本能に忠実で正直な存在があるだろうか。ご飯を与える人には尻尾を振り、悪い人間は噛んでしまう。前後計らず、本能だけに忠実である。画家はこの絵を通じて、犬のように欲もなく、その瞬間に満足し、貧困を恥じなければ、それがすなわち幸せだと言いたかったようだ。

絵の中の哲学者とは違って、画家は富と名声を追いかけ、この絵を描いた3年後、エコール・デ・ボザールの教授になった。40年間在職しながら2000人を超える学生を教え、彼の影響も国内外に大きくなった。しかし、印象主義が主流になると、彼の絵はすぐ歴史から忘れ去られた。犬のような人生を送った哲学者と成功を追っていた画家、どちらがもっと幸せだったのだろうか。