英語の「チャリティ(Charity)」は慈善や慈善団体を意味するが、寛容の意味もある。寛容の国オランダでは古くから弱者を助け、慈善を施すことが重要な美徳とされてきた。ジェイコブ・オクテルベルトが描いたこの絵も、16世紀のオランダ上流階級の家族の美徳が込められている。
絵には、大きく優雅な家の玄関で、乳母の手を握った裕福な家庭の子どもが、乞食の家族に貨幣を渡す様子が描かれている。しわのない白いドレスを着た子どもは、服装のために女児のように見えるが、実は男児だ。当時、慣例上7歳頃までは、男児も女の子の服を着ていた。みすぼらしい服装の乞食の少年は、片方の足を室内に踏み入れ、貨幣を受け取るために手に持った帽子を出している。
興味深い点は、登場人物たちの視線だ。乞食の少年の視線は身なりのいい子どもに向けられ、乳児を抱いた乞食の少年の母親は、息子を不憫そうに見ている。世の中のどの母親が、自分の子どもが物乞いすることを望むだろうか。でもどうしようもないようだ。一方、金持ちの子どもは、絵の外の私たちを見ている。まるで、「私は今、哀れな人を助けています」と言い、自分の慈善行為に誇りを感じているかのような表情だ。背後の居間で、この姿を満足気に見ている子どもの親も、正面を見つめ、子どもをちゃんと教育していることを表明しているかのようだ。絵の右下に登場する犬は、このすべての場面の証人役だ。
ロッテルダム出身のオクテルベルトは生涯、上流階級の日常をテーマに多くの絵を描いた。単なる外的描写ではなく、このように貧しい人を助け、異なる階層の人々が相互作用する様子を通じて道徳的教訓を与えようとした。
オクテルベルトは、上流階級の顧客のために絵を描いたが、貧しい人々への関心と同情心が深かった。玄関のドアを開けて乞食家族を受け入れ、彼らを不憫に見ている親の温かい視線が画家の心を代弁しているのかもしれない。