「酒は人間を慰めない。むしろ狂気から力を出させ、運命の主になる至高の領域に連れて行く。どんな人間も、女も、どんな詩や音楽や文学や美術も、酒が人間に行う機能、重要な創造行為をするという幻想に代わることはできない。酒はまさにそのような創造行為の代わりに存在する」(マルグリット・デュラス「物質的生活」)
フランスの作家マルグリット・デュラスは、アルコール依存症だった。毎日、大量のワインを飲みながら文を書いた。彼女の作品の中には、酒が重要な媒体でありモチーフになる。「物質的人生」は、デュラスの内密で私的なエッセイだ。48本の文の中で、最も心に響いたチャプターは「酒」だ。この短い文章で、デュラスは酒に対する幻滅を吐き出す。その一方で、酒だけが与えられる孤独と創意的なエネルギーについて語る。
作家にとって、お酒はインスピレーションであり慰めである。米国の作家チャールズ・ブコウスキーは、文を書く理想的な環境に関する質問に、「夜10時と午前2時、ワイン1本、タバコ、クラシック音楽が流れるラジオ」と話した。彼にとって素晴らしいワインとは、「神の血、創作に最高のもの」だ。ジョーン・ディディオンは、これ以上文章を書くのが難しいスランプに見舞われると、お湯をジンで割って飲むと話した。普通はジンに氷と炭酸水を入れてトニックの形で多く飲むが、お湯は新しい使い方のようで、実際に真似してみたことがある。最近のような寒い季節、眠る前に飲むお酒である「ナイトキャップ(nightcap)」の用途に素敵だ。
シカゴ・イリノイ大学の研究チームは、「コルクを抜いてミューズを呼び出す:酔いは創意的問題の解決を促す」という論文を通じて、酔った人が創意的な単語問題をはるかに早く解いたと報告した。良い酒は、いつも私たちが知らない向こうの世界に瞬時的に移動させる。もちろんあまり楽しすぎると、戻ってくるのが大変になると思うが…。