韓国戦争で中国共産軍の捕虜になった米海兵隊のフランク・H・シュワブル大佐は、米国が細菌戦を行ったという内容の自白文書に署名した。この文書には、責任者の名前、戦略会議、作戦内容などが詳細に記載されていた。この文書はすぐにプロパガンダに利用された。本国に送還された後、軍事裁判に立たされたシュワブル大佐は、自白内容が事実ではないと否定した。そしてこう言った。
「言葉は私のものだが、思考は彼らのものだった。これは私が説明しなければならない最も難しいことだ。嘘だとわかっていることを本物のように書くことができる」
シュワブル大佐はどうやって思考を支配され、虚偽の自白までするようになったのか。このような疑問は、第2次世界大戦後、特にナチスの暴力を経験した多くの人々が抱いた疑問だ。1903年生まれの著者は、ナチスが占領したオランダで彼らの精神的拷問の技術を目撃した。42年に英国に脱出した著者は、連合軍の精神科医として働き、多くの被害者と会った。この経験を基に、社会の中でどのように洗脳が作用し、それを克服するために何が必要かを本にまとめた。
通説に反して、肉体的な拷問よりも羞恥心を誘発するなど精神的な拷問の方が致命的だ。精神が崩壊すると動物のように振る舞うこともあり、拷問を受ける人だけでなく拷問する人も尊厳を失う。これを著者は「精神的殺人(menticide)」と言う。
普段はコントロールしていた葛藤が「精神的殺人」の圧力の前では簡単に崩れる。それゆえ、洗脳に勝つには、普段の内面の小さな葛藤も自分で克服しようとする「思考の労働」が必要だと著者は助言する。人生の重要な価値は何かという明確な信念を普段からしっかりと持っていなければならないということだ。
1956年に出版された本だが、今日でも示唆するところが少なくない。マスメディアが人々から主体的に考える機会を奪うという指摘は、60年以上経った今でも有効だ。
金民 kimmin@donga.com