「米国と中国の対立で10年以内に世界大戦が起きる可能性がある。人工知能(AI)の急速な発展がリスクをさらに高めている。台湾関連の対立を急いで緩和しなければならない」
最近、世界メディアのヘッドラインはヘンリー・キッシンジャー氏のこの発言で埋め尽くされた。半世紀前の1969~75年に大統領補佐官(国家安全保障担当)、73~77年に国務長官を務めた老政治家の洞察が今も大きな影響力を及ぼしている証拠だ。
キッシンジャー氏は27日に100歳を迎えた。ナチス政権下のドイツで幼少期を過ごし、ユダヤ人迫害を逃れて米国に定着した後、超大国の外交安全保障政策を担った彼の人生は、それ自体が現代史の巨大な軌跡を示している。昨年米国で出版された同書で、キッシンジャー氏は第2次世界大戦後の世界を作り上げた6人のリーダーの戦略を考察し、今日に投げかける示唆点を照らし出す。
キッシンジャー氏が見るリーダーの資質は、政治家型と預言者型の2つ。政治家型リーダーは、社会がアイデンティティを維持しながら慎重に変化を経験するよう導く。預言者型リーダーは、現状を管理するのではなく、それを越えようとする。優れたリーダーは2つの属性を総合し、必要な瞬間に反対の属性を取り入れる。「6人のリーダーはすべて、受け継いだ状況を越え、社会を可能性の限界まで押し上げた」と著者は言う。
西ドイツのアデナウアー初代首相(1876~1967)を、キッシンジャー氏は「謙虚さの戦略」と説明する。政治的な反対にもかかわらず、困難な統一よりも西ドイツの統合を優先し、経済奇跡の基盤を築いたという。フランスのシャルル・ド・ゴール元大統領(1890~1970)は、「意志の戦略」と要約される。亡命中に自由フランスの指導者となった彼は、フランスの政治だけでなく社会的刷新まで主導した。
キッシンジャー氏を国家安全保障担当補佐官に抜擢したニクソン元米大統領(1913~94)に著者が与えたキーワードは「均衡の戦略」。キッシンジャー氏自身にも当てはまる言葉だろう。ニクソン元大統領は1972年に中国を訪れてピンポン外交を開始し、ソ連を牽制する力の均衡を実現した。
イスラエルと手を組んだサダト元エジプト大統領(1918~81)は、「超越の戦略」と説明する。アジアの経済発展のモデルを築いたシンガポールのリー・クアンユー元首相(1923~2015)は「優越の戦略」がその鍵だった。サッチャー元英首相(1925~2013)には「信念の戦略」というキーワードを与える。当時、英国は高いインフレと国際社会での影響力の衰退を伴う困難な状況に直面していた。サッチャー元首相の在任期間、英国は金融の中心地として浮上し、共産主義への対応とフォークランド戦争の勝利で新たな地位を見つけることができた。
結論で著者は、6人の指導者全員が2度の世界大戦後の能力主義が生み出した中産階級出身の指導者だったと指摘する。特別ではない背景ゆえ、彼らは因習に挑戦することができ、通念を越えた視点を持つことができた。投票に有利だったり、自分の味方だけに呼びかけるレトリックに国の運命を委ねず、政派間の不和を招くことを恐れなかったという分析だ。
同書が出た後、世界が共通の賞賛を示したわけではない。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、同書をポール・ケネディの『大国の興亡』と同じ古典と評価した。英紙ガーディアンは、キッシンジャー氏の在任中、米国の影響力の下で第3世界で起きた残虐行為に言及し、「自分を過小評価したことがないキッシンジャーがドゴールの図々しさを尊敬するのは分かる」と指摘した。
ユ・ユンジョン記者 gustav@donga.com