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才能より重要な「永続的な資質」

Posted June. 12, 2023 08:06,   

Updated June. 12, 2023 08:06

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「頭脳の明晰さだけで働ける年数はせいぜい10年程度です。その期限を過ぎると、頭脳の明晰さに代わる、より大きく永続的な資質が必要です」(村上春樹「職業としての小説家」)

村上春樹は、「ノルウェーの森」「1Q84」などで広く知られる小説家だ。彼は1979年に文壇にデビューし、約45年間専業作家として活動しているが、「職業としての小説家」はどうやってこのように長い間、長い空白期なしに着実に良い作品を出して活動できたのかを特有の淡々として簡潔な文体で記した自伝的エッセイだ。

立派な芸術家になるためには才能が必要だ。優れた作品を多数残した春樹は、きっとそのような才能あふれる人だろう。しかし、春樹は、自分はきらめく才能で武装した天才的な芸術家ではなく、地道さと忍耐力、固い意志のような職業倫理と資質を備えた職業人に過ぎないと話す。彼の話によると、小説家を職業にするには天才的な才能ではなく、このような資質を育てるための後天的な訓練に頼らなければならない。

小説家ではないが、研究者であり著述家である私にとって、学術論文から研究書、大衆書、コラムなど多様な文を読み書きすることは職業の大きな部分を占める。ところが他人が書いた洞察や慧眼、鋭い分析を盛り込んだ文を見れば、時には羨ましさを感じ、さらに「私にはなぜあんなにきらめく才能がないのか」という嫉妬や自壊感を感じたりもする。

しかし、時間が経つにつれ、生まれつきの才能ほど重要なのは、恒常性を維持しようとする意志と努力であることに気づく。実際、私が研究者であり著述家という職業を持つようになったのは、今年でちょうど10年目となる。ただでさえ天才的な才能と明晰さが武器でなかった私が、この仕事をもっと長い間するには、今は春樹が話した「永続的資質」を内在化するために努力しなければならない時のようだ。