赤ん坊の時から分身のように育てた息子の目つきが、ある瞬間見慣れない。見るだけでも人生が充実していた日差しのような微笑は、跡形もない。息子は、「生きることが、私を押さえつけている」と泣き叫ぶ。最善を尽くして育てたのに、どこから間違っているのか、どうすれば子供を助けることができるのか分からない。憂鬱の沼で息子は道に迷い、親は無力だ。
19日に公開される映画「The Son/息子」は、うつ病に苦しむ10代の息子とこれを見守る両親の話を描いている。父親のピーター役を演じた俳優ヒュー・ジャックマンは、この映画で今年1月の第80回ゴールデングローブの授賞式で、主演男優賞にノミネートされた。
米ニューヨークの有名弁護士ピーターは、申し分のない暮らしをしている。広い家で美しい妻と一緒に過ごし、二人の間には生まれたばかりの赤ちゃんもいる。職場で認められ、政界からラブコールまで受ける。
完璧に見える彼の日常は、元妻が育てる10代の息子ニコラス(ゼン・マクグラス)に問題が生じ、揺れる。ニコラスは毎日、登校すると言って家を出るが、実は2ヵ月間欠席し、公園を徘徊しながら時間を過ごすという。ニコラスは、母親のケイト(ローラ・ダーン)の代わりに父親と暮らすと言って家まで引越すが、症状は深まる。ピーターは、「困難なく育ったお前は、一体何が問題なのか」と息子を責めたりもし、その気持ちを理解してあげようとそれなりに努力する。しかし、返ってくるのは、離婚した両親に対する恨みだ。ピーターは幼い頃、家族を捨てて成功のみ追い求めた父親を嫌悪し、「良い父親になりたい」という夢を見たが、失敗者になったようで一緒に崩れる。
ジャックマンは、子供のうつ病に直面する父親の戸惑いと無力感をリアルに演じた。彼は、演出を担当したフローリアン・ゼレール監督に電子メールを送り、「この役をぜひ演じたい」と話したという。
映画は、劇作家でもあるゼレール監督の「家族三部作」のうち、2番目に映画化された。2021年に映画化された「ファーザー」は、認知症にかかった父親と娘の物語で、主演のアンソニー・ホプキンスはアカデミー主演男優賞を受賞した。3部作のうち「ザ・マザー」は、まだ映画化されていない。ゼレール監督は、「(今回の映画は)罪悪感と家族間の絆、究極的には愛に関する映画だ」とし、「精神疾患に関する対話の幅を広げたかった」と話した。
崔智善 aurinko@donga.com