昨年末、政府はグローバルサプライチェーンの危機的状況に速やかに対応するため、レアメタルの備蓄目標を100日分(一部のレアアース、コバルトは180日)へと2倍近く拡大した。しかし、未来の成長エンジンに挙げられる二次電池に入るリチウムの備蓄量は、依然として6日分にも満たない。
にもかかわらず、今年にレアメタルの購入に使える資金は、むしろ1年前より約24%減少した。鉱物を保有している諸国が「資源の兵器化」を本格化しているだけに、政府は主要鉱物を安定的に確保し、万一の場合、企業の生産支障を最小化しなければならないという声が高まっている。
●サプライチェーンのショック時は6日でリチウムが底をつく
24日、与党「国民の力」の李種培(イ・ジョンベ)議員が韓国鉱害(クァンへ)鉱業公団から受け取った資料によると、今年5月末のリチウムの備蓄量は5.8日分だった。政府が目標に据えた備蓄量の6%分だ。韓国国内企業がリチウムを購入する国が輸出統制に乗り出すなど、サプライチェーンに衝撃が起きれば、政府が保有しているリチウムで耐えられる時間は1週間もない。リチウムは、二次電池の主要素材で、「白い石油」とも呼ばれる。国際エネルギー機関(IEA)によると、2040年のリチウムの需要は2020年より40倍以上伸びる見通しだ。
電気自動車のバッテリーなどに使われるコバルトの備蓄量も、12.4日分にとどまっている。政府の備蓄目標は180日分だ。業界では、企業が持っている鉱物量が全て使い果たされた後、再び普段の水準に回復するのにかかる時間は平均90~100日と見ている。コバルトの最大輸出国である中国が輸出統制に乗り出すと、国内バッテリー企業の生産障害は2ヵ月以上続く可能性がある。
ガリウムの備蓄量も40日分で、政府備蓄目標量の半分にも及ばなかった。先端半導体や太陽光パネル用太陽電池などに使われるガリウムは、中国政府が今月3日、輸出統制対象に含めた鉱物だ。中国からガリウムを輸入するためには、メーカーが具体的な海外購入者情報を報告し、中国商務省から許可を受けなければならない。
仁荷(インハ)大学エネルギー資源工学科のカン・チョング招聘教授は、「主要鉱物保有国は、鉱物を国有化する方法で資源の兵器化に乗り出している」とし、「このような状況では、国と談判しなければならない企業の交渉力が低下せざるを得ないため、政府が備蓄量を増やし、企業の生産支障への懸念を緩和する必要がある」と指摘した。実際、リチウムが世界で最も多く埋蔵されているチリは、今年4月、リチウム産業を国有化すると宣言している。鉱物資源の大国であるインドネシアは、2020年にニッケル輸出を全面的に禁止し、今年からは銅に対して最大10%の輸出税を課すことにしている。
●99%が埋まった備蓄基地
問題は、備蓄量を増やしたくても、予算が十分ではないということだ。今年、鉱害鉱業公団がレアメタルの購入のために支出された政府出資金は372億3200万ウォンだ。昨年の487億9100万ウォンより、23.7%減少した規模だ。産業通商資源部(産資部)は、レアメタルの備蓄目標量に合わせるためには、レアメタルの購入予算を1000億ウォンまで増やさなければならないと見ている。現在、産業部は企画財政部とともに、関連予算の拡大について協議している。
さらに、レアメタルの価格が乱高下していることから、買入時点を決めることも容易ではない。昨年、レアメタルの平均輸入単価は1トン当たり4687ドルで、前年より95.4%高騰した。実際、二次電池の主要原料である炭酸リチウムの場合、2020年9月は1キロ当たり平均6ドル台だったが、電気自動車市場の急成長に伴って価格が高騰し、2022年11月は80ドル台を突破し、1200%前後も高騰した。産業部の関係者は、「各国のエネルギー転換政策により需要が伸びているうえ、中国など生産国の削減政策まで重なり、鉱物価格が乱高下している」とし、「適正価格を計るのは容易ではなく、鉱物を買ってくるのに困難がある」と話した。
レアメタルを保管する備蓄基地の拡充も急がれる。全羅北道群山(チョンラブクド・クンサン)に位置する鉱害鉱業公団のレアメタル備蓄基地は、現在、98.5%でほぼ頭打ちの状態となっている。鉱物をより多く購入して備蓄量を増やそうとしても、保管するところがない。現在、追加備蓄基地の建設のための予備妥当性調査が行われている。
李種培議員は、「半導体など、主要産業における生産支障がないよう十分な予算の確保はもちろん、特定国への依存度の高い品目の代替物質の技術開発、再資源化など対応力量の拡充も同時になされなければならない」と強調した。
世宗市=キム・ヒョンミン記者 kalssam35@donga.com