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公権力を確立してこそ殺人予告を阻止できる

公権力を確立してこそ殺人予告を阻止できる

Posted August. 11, 2023 08:18,   

Updated August. 11, 2023 08:18

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最近放映された韓国ドラマ「刑事ロク」は、銃の使用によって運命が交錯する警察官の話を濃密に描いている。凶悪犯を検挙しても銃を使用したという理由で停職3ヵ月の懲戒処分を受けた警察官。そして娘の首にナイフを突きつける人質犯を銃で撃つことができない主人公キム・テクロク刑事の姿は、大韓民国警察の今日を映し出している。

先月21日、チョ・ソン(33)がソウル新林(シンリム)駅で凶器を振り回し、4人の犠牲者が発生して2週間の間に、韓国は「殺人予告」の恐怖に包まれた。3日、盆唐(ブンダン)の書峴(ソヒョン)駅でチェ・ウォンジョン(22)の車と凶器で14人の死傷者が発生し、国民は繁華街やデパートで周囲を見回し、見知らぬ人を警戒して歩くようになった。「世界で最も安全な国」と評価されていた大韓民国がどうしてこのような状況になったのか。

「刑事ロク」はその答えを提示する。仲間の危機的状況で銃を使用しても懲戒処分を心配しなければならない現実。凶悪犯を検挙した「功績」よりも、凶悪犯を傷つけてはならない「人権」が重視される状況。麻薬組織の取り締まりで、仲間が危険にさらされているのを目撃しても銃を撃つべきかどうか警察官が言い争う姿。そして自分の娘を人質に取った犯人に対して、なかなか引き金を引くことができない主人公まで。「刑事ロク」は、公権力を行使する際に考慮しなければならないことが多すぎる韓国の警察の現実をリアルに捉えている。公権力がこのように悩んでいる間に、韓国は「通り魔犯罪」と殺人予告が横行する社会になってしまった。

政府は遅ればせながら対策を打ち出している。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は、凶器の振り回しに対して「警察力を総動員して超強硬に対応せよ」と指示し、尹熙根(ユン・ヒグン)警察庁長は、「銃を積極的に活用せよ」と一線に指示した。法務部は、殺人予告行為を処罰する条項を新設し、公共の場所での凶器所持の禁止を推進する方針だ。韓東勲(ハン・ドンフン)法務部長官も、暴力事犯の検挙過程で警察が物理力を行使する際、正当防衛を積極的に適用するよう最高検察庁に指示した。

遅ればせながらの感はあるが、政府が公権力行使を積極的に保障し、殺人予告と凶器の振り回しを防止できるよう制度改善に乗り出したことは歓迎すべきことだ。しかし、最前線の警察官は依然として政府を信じていない。政府を信じて安易に物理力を行使し、被疑者が負傷したり死亡した場合、刑事処罰を受けたり、訴訟を起こされる可能性があるからだ。実際に警察によると、裁判所が公権力を過度に行使したと認めて警察官を処罰したり、民事責任を負わせた判例が10件もあるという。警察が正当な物理力行使に「免責権」を付与してほしいと要請する理由だ。

過度な公権力の行使は明らかに制御しなければならない。被疑者の人権も大切だ。しかし、訴訟や処罰を恐れて緊急事態でも物理的な力を行使しにくいという警察の訴えにも理由がある。凶器の振り回しと殺人予告が横行することを防止するには、公権力から確立しなければならない。政府と国会が「キム・テクロク」の切実な訴えを見過ごしてはならない。